トリエステの坂道: 須賀敦子コレクション (白水Uブックス 1055 エッセイの小径 須賀敦子コレクション)
トリエステの坂道: 須賀敦子コレクション (白水Uブックス 1055 エッセイの小径 須賀敦子コレクション) / 感想・レビュー
アン
須賀さんが心惹かれた詩人、サバが暮らした町をひとりで訪ねる表題作、背広の襟を立て両手で上着の前を合わせ「雨のなかを走る男たち」、義弟アルドが結婚し古い家具が運び出された「キッチンが変った日」…。須賀さんの最愛の夫ペッピーノと彼の家族との交流を中心に美しい文章で綴られたエッセイ。ミラノで出会った貧しくも懸命に生きる人々への愛情が伝わり、亡くなった夫の家族を大切に思う様子に心がじんわりと温かくなります。『ある家族の会話』の著者ナタリア・ギンズブルグへの哀惜に満ちた「ふるえる手」は忘れ難い作品です。
2020/01/25
燃えつきた棒
悲しみを癒すために、また須賀さんの力を借りることにした。須賀さんの文章を読むことは、いつも僕を深く癒してくれるから。 本書の登場人物の多くは、イタリアの陽光の下で、みな濃い影の部分を持っている。 知能指数がかなり低く、問題児で、何度も警察の厄介になっているトーニ。 父と兄、妹を早くに亡くし、自らも四十一歳で急死する須賀さんの夫、ペッピーノ。 大半が戦争や病気などで夫を亡くした鉄道員官舎の人々。 貧しくて孤独で、それぞれの不幸せを抱えた小さな人々。→
2023/07/16
U
サバが愛したトリエステを旅したときの紀行文「トリエステの坂道」を皮切りに、夫ペッピーノとその親族たちをめぐるお話が計十二話、つづられています。静かで美しいのに、ぐぐっと一気にひきこまれる文体で、わたしも親族になった視点からよめ、おこがましいですけれど須賀さんとすごく、距離が近づいたような気がしました。もしかしたらこの作品が、夫ペッピーノをはじめとする親族たちの、死にふれたものであり、また登場人物たちの何気ない強烈さが、そうした気持ちになるのを手伝ったのかもしれません。とにかく一体感を味わえた作品でした。
2015/08/16
吟遊
須賀敦子さんの『トリエステの坂道』。死の影が詩のようです。それらは、悲嘆の死ではなくて、過ぎ去った出来事の影、風化してゆく石のようで、それを生あるひとたちが穏やかとも言えない生活のなかで見守っている。そんな景色のつなぎ合わせ。
2015/07/13
geromichi
名著。読み進むうちに泣きそうになってしまう。特に最後から2話目、語り手(須賀敦子)の義弟でならず者だったアルドが、その生涯のほとんどを過ごしたミラノの官舎を脱し、齢60を過ぎてから自分の家を建てた話は感動的だった。フォントや余白の大きさでしょうか、なんとなくですが白水社版で読むのがオススメです。
2021/11/10
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