14歳のアウシュヴィッツ ─ 収容所を生き延びた少女の手記
14歳のアウシュヴィッツ ─ 収容所を生き延びた少女の手記 / 感想・レビュー
のっち♬
ナチス収容所で書き綴られたハンガリー系ユダヤ少女の日記。14歳の主観で描かれる女囚人の日常は鮮烈で終始悪態とブラックユーモアのオンパレード。辛辣な代名詞や比喩の濫用は読みづらいが、これが本書を暗澹たる回想録ならぬ不謹慎な笑いすら誘う「生の記録」たらしめており、喜劇作家の萌芽を感じる。収容者にも全く容赦ない、綺麗事を言うフランス人には特に。辺境出身目線の洞察は人間の強かさも暗部も逃さない。ノートと生への執念も次第に強靭になる、サボり方も大胆不敵。本書はアウシュビッツの悲劇的陶酔へのシニカルなアンチテーゼだ。
2022/04/10
里季
2013年から新年に向かう時にすごい本に出会えた。これはルーマニアのアンネ・フランクとも言われる当時14歳の少女の残したアウシュヴィッツ収容所での出来事を克明に記した手記である。14歳と言えば、ファンシーグッズや友人とのおしゃべりに夢中になる年頃。なのに著者アナ・ノヴァクは年齢からは想像もできないほどの筆致で女子収容所の実態を訴えている。やっと手に入れたノートを隠しながら何とか自分の手記を残して外の世界に出そうと、強い信念を持ち続け、時にはずるいことや乱暴なまでの同朋とのやり取りを経て書き続けた。
2014/01/02
たまきら
少女らしい感性と、生き延びてやろうと決意する怒りに満ちた生命力。様々な感情が万華鏡のようにちりばめられていて、読みやすい文章ではない。けれど、ドイツ人だけではなく、違う言語を話すことで生じる差別、収容所内でのいじめ、気持ち悪い男性…と戦わなければいけないものがたくさんあった彼女の日々を思うと、その感情の揺らぎこそがリアルなんだろうな。冷静な記録ではないけれど、アンネフランクとはまた違う一少女の「あの頃」に出会える貴重なことばです。
2022/09/09
つちのこ
死と隣り合わせの状況にありながら、比喩を駆使したブラックユーモアと、純真な少女らしさが溢れたストレートな表現が対照的。出版に当たり加筆修正はあったと思うが、これを14歳の少女がほんとうに書いたのかと疑いたくなるような、熟達した文章力を感じる。収容所内で体験した悲惨な出来事は思春期の喜びと楽しさを奪い、その後の人生に計り知れない影響を与えたのは疑いようもない。日記を綴ることのこだわりは単に書くことが好きなだけでなく、死を前にした遺書のような、残すことへの使命感を感じずにはいられない。読み継がれて欲しい。
2022/05/25
ひろぞー
14歳の少女が想いをありのままぶちまけてる内容だった。生きるために綺麗事なんか言ってられるかという姿勢に胸を打たれる。あくまで日記であるから前後関係やこれは誰のこと❔となる箇所も多く、読み取るのが難しいところもある。でもそこよりも、当時収容所内で何が起きていたのか当事者目線で知ることができた。これらの事を忘れちゃいけないと思う。それにしても主人公は強い。
2016/11/05
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