ミレナへの手紙
ミレナへの手紙 / 感想・レビュー
信兵衛
26年ぶりの再読です。 1919~20年、当時(36歳)の恋人だったミレナ・イェセンスカー(23歳)に対する夥しい手紙を収録した書簡集。 「あなたの迷宮の中に」を読む前に、読んでおこうと思った次第です。
2024/03/31
踊る猫
カフカにとってミレナはどういう女性だったのだろう? 人妻であるにも拘らず恋をしてしまった相手であり、同時に母親のような存在でもあったのではないだろうか……一方ミレナの方からはカフカに送った書簡は収録されてないが、多分同じく心の病を抱えそこから生まれる孤独と苦悩を打ち明けられる唯一無二の存在でもあったのでは、と思わされた。そうでなければカフカのような、一日に何通も手紙を書き返事を待ちわびる面倒臭い人間と文通が続かなかったのではないか、と。カフカとミレナの関係を把握出来ていなかったせいか、些か消化不足となった
2016/08/19
Tonex
カフカ全集にも『ミレナへの手紙』が収録されているが、手紙の配列が違う。その後の研究により順序が変更された。▼良い点。新訳なので読みやすい。字も大きい。全集で無視された敬称・親称のニュアンスの違いや、手紙の書き出し、しめくくりの言葉がちゃんと翻訳されている。▼悪い点。原書にあった詳細な注や補遺がほとんど切り捨てられた。一般読者には煩雑だろうという判断によるものと思われるが、研究者でない人間が原書を手に取ることなどないのだから、訳しておいて欲しかった。あと、池内紀の訳なので意訳が多いと思われる。
2015/12/18
イコ
恋に盛りあがっている時の手紙のやり取りが早過ぎ、その日の朝、昼、晩で手紙を書いて送って、相手が返事をする前に、手紙が来ないって落ち込んでたりするカフカ。あまりに早過ぎて、そのまま消し飛んだみたいな関係で、恋が成就しなかったのが分かるような分からないような、カフカの作品よりもより難解である。頻繁にやり取りしている時の手紙より、日が空いて書いた手紙の方が分かりやすいので、筆先が暴走気味だったのかもしれない。
2024/10/17
かふ
1922年3月末のカフカとミレナが疎遠になって再び手紙を出したカフカ。それまでの手紙のことを分析的に回想している。そこでカフカは手紙を自分自身の亡霊と交わること、分身したもう一人の人格となってしまうことを書いている。手紙の亡霊。宛名の亡霊。書かずにいられない分身としての人格とに引き裂かれる自己なのか。ユダヤ性と魂の問題。その分身を引き出したミレナ。ウィーンでの最初の出会いの4日間の出来事は最も燃え上がった森での逢いびき(『去年マリエンバードへ』のように謎だ)。
2013/07/27
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