なにが? 永遠が (世界の迷路)
なにが? 永遠が (世界の迷路) / 感想・レビュー
KAZOO
須賀敦子さんの「ユルスナールの靴」が印象に残っていたのと、訳者が私の好きな堀江敏幸さんなので読んでみることにしました。この作家の自伝3部作の最後の作品のようですが未完ということでもう少し長い予定だったのでしょう。私の好きなタイプの話でかなりきめ細かい日常が描かれています。今後少しこの作家のものを読んでみたい気もします。
2018/08/17
syaori
三部作の三作目で未完の遺作。痛感するのは、人物や出来事は「反射角と入射角」により移ろうものだということ。何度も語られる事件、人々は見る角度、時間的な距離により様々に変化し印象を変えてゆく。「非の打ち所のない」人物も近づいてみると混乱し苦しんでいて、善と悪、理性と正義は角度によって入れ替わり、世界は入組んだ迷路と化す。作者はそんな世界を描くことで、錯綜する自身の心も描いていたように思います。そして本書はその世界の、心の迷路を迷い見詰め意味を問い続けた作者の答えであり、世界への愛の言葉だったように感じました。
2020/06/11
兎乃
死後出版された Quoi? L’Éternité を堀江氏の翻訳で読める幸せ。ランボーの詩句をタイトルにした第3巻は厳密に言えば未完、けれどヒトは自らの生まれ出でた瞬間と死の瞬間を 自らの手で記録する事は不可能であり ユルスナールの作家としての慎みを感じる。全体タイトル“世界の迷路”は、17世紀の作家コメニウスの作品から。混沌の時代、或る家族の物語は、歴史という巨大な迷路そのものだという認識に至る。描く時代によってユルスナールは 微妙なスタイルの変化を見せ、各巻ごとに翻訳者がかわる手法はとても良いと思う。
2015/09/16
みねたか@
名作「ハドリアヌス帝の回想」で挫折して以来敷居が高いユルスナール。Sさんのレビューにつられ手に取りました。全般に漂う硬質なエロス,透徹した視座,推敲を重ねた文章は隙がなく圧倒されます。本作では特に章ごとに趣の異なる構成に魅せられました。前半の焦眉マリーの死,父ミシェルとジャンヌの恋,第一次大戦などドラマチックな場面の一方,静かに描かれる少女の内面,時に幻想的なまでに美しい情景。Sさんのおかげでまた充実した読書でした。ありがとうございます(自伝的三部作の最終巻のみを読むという所業はご容赦ください)。
2020/11/25
さちこ
私という存在 。なんなのだろう。ユルスナールさんは全力で自分と向き合ったんでしょうね。翻訳が素晴らしいです。
2015/12/13
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