シャルリ・エブド事件を考える: ふらんす特別編集
シャルリ・エブド事件を考える: ふらんす特別編集 / 感想・レビュー
かもめ通信
フランス語学習とフランス語圏文化に関する月刊誌「ふらんす」の特別号。シャルリ・エブド襲撃事件が起きた時、たまたまパリにいたというフランス文学者の鹿島茂さんが、翻訳家や作家、文学・政治学・文化史・宗教等様々な分野の研究者等、広く専門家たちに呼びかけて作った特集だという。30人に及ぶ執筆陣がそれぞれになかなか濃い文章を寄せているので、130ページほどの薄い冊子ながらはかなりの読み応え。中には「?」と思う意見もあるが、それも含めて問題を考える上でも、今後の読書傾向に反映させるという意味でも参考になった。
2015/03/15
qoop
記憶に新しいパリのテロ事件。こうした衝撃的な事件が起こるとその概要に目を奪われがちだが、それだけでは何も分からないのと同じ。本書は事件とその背景を多角的に論じ、日本では分かり難いフランスの宗教事情、移民の現状、文化のあり方などを伝えてくれる。論説一つ一つが限られた分量であるゆえに内容の密度が濃く、示唆に富む。事件と向き合うことで明かされる現代フランスの歪さの一端に接し、安直な怒りも物知り顔も乗り越えねばならないのだと思わせられる。
2022/07/27
nasuken
シャルリ・エブド襲撃事件に対してフランスに造詣の深い著者をの意見を集めた論考集。様々な立場の著者が集まっているので事件への評価も様々。論考に共通するのはフランス文化に通底するライシテ(非宗教)という概念への言及。これについてはもっとよく調べておかないと事件に対する反応の評価を見誤ると感じた。そして最後の池内氏の論考にははっとさせられた。
2015/06/15
すがの
シャルリエブドを巡るかの事件について、知識人が論考する。質の高い議論を日本語でまとめて読める(現在は)貴重な書であろう。レイシテについてもっと知らねばならぬと実感する。そういえば大学の僕の担当教授はフランス宗教政策の専門家である。
2015/03/19
figaro
単一で不可分の共同体という、既に成立しそうもない理念を掲げた国家で、ルペン化し、議会で国歌が斉唱されるという、この百年間絶えてなかった行動は、大行進とともに衝撃の大きさを伝える。「他者への窓のない相対主義」というフランス社会の評価、メノッキオ裁判との比較、特に風刺画の歴史は興味深く、硬直した言論空間しかない日本との対比の中で、著者らの批判的な目は、知性がなお健在だと感じさせる。
2015/08/12
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