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かつては岸 (エクス・リブリス)

かつては岸 (エクス・リブリス)

かつては岸 (エクス・リブリス)

作家
ポール ユーン
藤井光
出版社
白水社
発売日
2014-06-25
ISBN
9784560090343
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かつては岸 (エクス・リブリス) / 感想・レビュー

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モルク

韓国系アメリカ人による韓国南部のソラという架空の島を舞台とした短編集。日本の占領下の時代からリゾート地となった現代まで、島という狭い空間で生きる寡黙な人々の失ったものへの愛着と生を描く。最初は読みにくさを感じるも次第にその静けさ懐かしさに惹かれていく。これはじっくりと読むべき作品。日本から孤児として送られてきた美弥が大戦後も島に残り野戦病院で働いていたがそこに孤児院で一緒だった純平に似た患者が…彼女の記憶が甦る、戦争そしてふるさと…を描いた「そしてわたしたちはここに」が好き。

2022/09/20

アン

韓国南部にある架空の島を舞台にした短篇集8篇。ホテルに滞在するアメリカの未亡人と給仕が洞窟へ行く表題作、母親亡き後、牧場を手放す父親と娘の関係が愛おしい「わたしはクスノキの上」、孤児として日本から島へ送られた野戦病院で働く女性が主人公の「そしてわたしたちはここに」…。アリステア・マクラウドの『島』にインスピレーションを受けた作品もあるそうで、過去の記憶と現在の営みを通し、人々の心の機微を繊細に描いています。喪失や別離による孤独や心の空白、すれ違い。光り続ける星々と移りゆく時の切なさが心にしみる物語たち。

2020/01/29

minami

8篇の短編集。朝鮮半島のソラ島が舞台で、第二次世界大戦の頃の過去と現在という時代が2つの設定だ。それぞれのお話の読み出しに一瞬戸惑う。でもすぐに物語に引き込まれてしまった。自然描写がなんて美しいんだろう。こういう描写が多い物語は、なかなか想像力が追いつかなくて苦しい読書となる事もあるのに。でも全然苦にならなかった。時代によって戦争、日本からの移民、近代化した生活といろいろな人生があった。この人たちの心情がこれまた丁寧に描かれていて、そして先行きどうなるのかも気になる物語。ちょっと幻想的なのにリアルな物語。

2022/09/07

ちえ

作者は韓国系アメリカ人。韓国の南に位置する架空の島ソラが舞台の短編集。静かで透明感を感じる文章を読みながら感じていたのは、どうしようもない孤独や寂しさ。信じていたもの、大切にしていたものが、ある日、気が付くと崩れていく。確かだと思っていたものが揺らいでいる。その感覚。それでも心の中がどれほど荒れていても、それを外には出さない、出せない。きっと傍目には何かが大きく変わったようには見えないだろう。どの話も密かな強さと絶対的な孤独を感じるものだった。言葉にはできない何かが確かに心の中に残った。

2021/09/29

まさむ♪ね

訳者の藤井光さんが仰るように、この若い作家は言葉を絵筆のように使います。さしずめその絵は静謐さを湛える水彩画でしょうか。まずは太陽の光を反射して銀にきらめく蒼い海を描いた、その中央には白い砂浜がまぶしく縁取る島を、さらにその中央には緑が目にもやさしい山を描く。そして街の灯は淡くせつなく、残酷なまでに美しい。変えられぬ過去、変わりゆく今、ソラ島に生きる人々はあてもなくさまよい、悲しみにうたれ、幻の空を見上げる。時の炎はゆらゆらゆらめき、迷い込んだ洞窟の岩肌をうごめくように照らしながら闇の奥へと消えていった。

2016/03/26

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