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帰りたい

帰りたい

帰りたい

作家
カミーラ・シャムジー
金原瑞人
安納 令奈
出版社
白水社
発売日
2022-06-28
ISBN
9784560090749
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帰りたい / 感想・レビュー

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どんぐり

「ジハード戦士の息子」としてリクルートされ、シリアに入国したブリティッシュムスリム。自分が加わった組織が殺人カルト集団だとは知らずにISのメディア部門で斬首場面を撮影するよう命じられ、抜け出せず帰還不能に。青年の救出にイギリス本国の双子の姉アニーカとアメリカに出国した長女イスマ、そこにイギリスの政府高官とその息子、パキスタンとISを巻き込んでの怒涛の展開。とりわけアニーカの双子の絆と行動は、終盤に思ってもいないところに着地する。→

2022/11/30

(C17H26O4)

あまりに、あまりに衝撃のラスト。その衝撃に、そこに至るまでの全てをもっていかれてしまった感覚に陥り、暫し呆然となった。この展開には少々エンタメ感が否めないと思わないでもなかったけれど。しかし、読後、それ以上にいつまでも頭から離れない場面がある。ISの組織の一員となってしまったパーヴェイズ少年が捕虜殺害の場に録音係として立ち会う場面だ。リアルのニュース映像、オレンジ色の服を着させられた捕虜がISによって殺害された映像が喚起したからだ。

2022/09/19

ヘラジカ

呆然とするほどの衝撃作。「家」や「家族」というものは、複雑な国家システムに守られていると同時に管理・統制されてもいることに、日本人でも国外と多少なり接触を持ったことがある人は心得ているはずだ。しかし、それは欧米諸国に住む移民、ことムスリムにとっては人生を規定することにも繋がる。移民を束縛する軛やISのリクルート、自らを構成する文化や宗教と共同体の齟齬。一見して分かり易い筋書きだが尋常でない緊密度を持った作品である。多視点からなる家族小説の面も強調されているだけに、ラストは殊更に衝撃的だった。

2022/07/01

夜長月🌙@新潮部

一般のムスリム(イスラム教徒)がイスラム国の影響でどれだけ迷惑を被っているのかがわかります。繊細な宗教問題と個人の思慕が絡み合うとそこに生じる問題は何千とおりにもなり解決の道筋が立ちません。個人的にどう思うのかということとは別に政治的な決定も大きな意味を持ちます。今、ムスリムを取り巻く混沌を広く世に知らせ目を開かせる物語です。

2023/09/19

天の川

イギリス国籍を持つムスリム移民の置かれる立場の難しさ。特にグァンタナモ移送中に死亡したジハード戦闘員の父親を持つ姉妹には。巧みにイスラム国にリクルートされた双子の弟の奪還を巡り対立する姉妹。どちらの言い分もわかる。目的のため、ムスリム家系出身の内務大臣の息子を籠絡する妹。ギリシャ悲劇『アンティゴネー』に着想を得た作品。守られるべきは国の法律か肉親への愛なのか。さらに、本来、国民を保護する立場の国が、二重国籍のムスリム移民を簡単に切って捨てる現実が加味される。結末のあまりの哀しさに途方に暮れた。

2022/09/28

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