灯台守の話
灯台守の話 / 感想・レビュー
アン
「ほら、光の筋が海を照らしだす。あなたの物語。わたしの。彼の。」母親を事故で失い、盲目の灯台守ピューに育てられ、彼が語る物語に耳を傾けるシルバー。愛を求め、2つの人生に引き裂かれた牧師の物語は痛ましく、難破船のよう。一条の光で外界を照らす確固たる存在の灯台。彼女は受け継がれた物語を聞き、自ら語ることで心の拠り所を得るように愛へ導かれていきます。その様子は揺るぎない灯台の安心感と重なり、救いを感じさせてくれます。世界をつなぐ物語の力は、未来への祈りを宿しているのかもしれません。
2019/12/11
アナーキー靴下
美しく素敵な時間だった。続きものの話を聞かせてくれる相手に「お話して」とせがむのは、終わらせないで、と同義なんだなと思う。いつまでも無限に続く世界を求めている。終わりがない物語は死でさえ結末とはならず、いくらでも意味を変えることができてしまう。その中にあってさえ変わらないもの、『トリスタンとイゾルデ』、「あなたとわたしの他には何ひとつ存在しない」美しく完璧だが刹那的であることを運命づけられている物語。語り語られることで自身も物語に取り込まれてしまうのだろうか、はっきりしていたはずの境界線は次第にかすれて。
2023/05/08
帽子を編みます
これは愛を語る話、お話しして、3つの単語(I love you)からなる話を。最初に読んだときは、ただ面白く奇想天外な筋を追い、愛の不思議を、その燃える思いを傍観者として眺め、再読の今は、過ぎた思い、温かな燠、真っ白な灰、いま尚燃える思い、いろいろな愛を思う。スティーヴンソン、トリスタンとイゾルデ、ここでも出会う。この本を読む機会を与えてくれたこの場に感謝を。冷静な傍観者の視点だけでは得られないものがあることに気付き、心を動かし、愛を与えること、自ら動くことで得られる喜び。読む価値のあるお話です。
2021/10/07
ケロリーヌ@ベルばら同盟
太陽と月、光と闇、シルバーとダーク。月にロケットが飛ぶ時代と、19世紀が、入れ子細工のように時空を超え、海上の星座、灯台の灯火を連ねた首飾りのように螺旋を描き、盲目の灯台守ピューが語る、おしまいのない物語となる。自然淘汰には存在しない愛という要素。トリスタンとイゾルデ。水底に鎮むジキルとハイド。化石に書かれた記録。スコットランド北西端"怒りの岬"ケープ・ラス。カモメと夢だけが塒とする断崖には、数多の物語が宿る。ケープ・ラスには、いつでもピューがいる。銀と海賊で作られた娘、シルバーが新しい美しい物語を紡ぐ。
2021/02/05
KAZOO
ここの読み友さんのレビューで興味をもって図書館から借りてきて読みました。大人向きというよりも若干若い人向きの小説ではないかという気がしました。純文学というよりも軽めのエンターテイメント的な要素があり話が様々な方面に進むので飽きさせない工夫がされているように感じました。
2015/01/21
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