アレクシス あるいは空しい戦いについて/とどめの一撃
アレクシス あるいは空しい戦いについて/とどめの一撃 / 感想・レビュー
ふるい
ユルスナールの中篇ふたつ。初期の作品だからかハドリアヌス帝より読みやすく、格調高い文章を隅々まで味わえる。とどめの一撃のほうはなんだか佐藤亜紀の小説を読んでいるみたいな感じがした。
2018/03/01
pino
あがいて、あがいて、さっぱりするという透徹の仕方はあるんだと思う。善良さや美徳等精神性を重んじる甘美さを描く一方、自分の意思に従う苦悩と解放を肯定する叫び。ユルスナールさんは両者とも否定していないんだな。
2019/04/01
u
昨年末「とどめの一撃」を読んだときに思ったことが、「アレクシス」にも当てはまる。語り手の「私」は、「あなた」のことを自分で思うよりも愛していたのではないか——少なくとも、愛していなかったとは言えないのではないか——。両作ともはっきり同性愛と書かれているわけではない。紋切り型を拒み、あくまで主観に留まろうとするがゆえのそうした「避けがたい歪曲」(堀江敏幸)がさらにそんな感想に説得力を与えるように思われる。語られ生き直されるのは結実しなかった愛、破局した存在の結びつきであり、あたかもその必然性を(続く)
2024/01/16
アシモ
文章は美しいがいつ話が始まるんだ?と思っているうちに終わった表題作。とどめの一撃は映画みたいでよかった。
2023/01/29
原玉幸子
著者『ハドリアヌス帝の回想』で「仏語を学びたい(と思うほど素晴らしい)」との衝動に囚われ、以降仏人の思考形式や思想信条が何たるやに興味を持つ様になりました。妻に宛てた主人公の書簡形式の本書は、(哲学書の様な!)美的感覚に繋がりながらも、退廃的絶望的な思想や感情が元にある描写が、読者の心を動かします。そして、境遇の悲惨さ故に読み進める間ずっと惨めな気分に覆われますが、最後、憑かれた様にピアノを奏でる主人公の心情の吐露に、芸術家の本質や誕生の萌芽を感じ、通底する本作品の主題に酔いしれます。(◎2018年・春)
2020/03/06
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