カフカの生涯 (白水Uブックス)
カフカの生涯 (白水Uブックス) / 感想・レビュー
市太郎
カフカの誕生日に。彼の生涯を歴史の流れとともに語る。やはり変わった男だったようだ。歴史は第一次大戦を経てやがてホロコーストへと至るユダヤ人にとって厳しい時代。しかしこの男はそんな時代の流れとは無関心に自分の執筆に情熱を注ぐ。女性に何百通も手紙を送っておきながらいざ会うとなったらもじもじして引き延ばすとかその人柄にも笑ってしまう。本人はいたって真面目なのだろうが。家族や周囲の人がその後、強制収容所で多く命を落とした事を考えるとその前に息を引き取ったのは幸せだったと言えるのだろうか。彼の風変わりな小説に乾杯。
2014/07/03
harass
題名の通りの評伝。書き方が小説のようで読みだして面食らったがじきに慣れた。時代と地域と民族の複雑さが詳しく解説してあり、聞きかじったこの作家の環境などについて整理できた。カフカの生活などについてがある。あまり有能では無かったようだ…… チェコのユーモア作家ハシェクと同時代で同じ街に住んでいたことをはじめて知った。カフカのファンであればぜひ。個人的にこの訳者がまだ存命であることに驚く。
2016/03/14
風に吹かれて
1900年前後の時代がどのような時代であったのか、その中でユダヤ人がどのような生活を送ってきたのか、移りゆく時代の中で親子の意識の違いが生まれていたことなど、カフカが生きた時代のことがわかりやすく書かれている。そして、カフカの作品や日記、手紙などを読み込んだ著者が描いたカフカの心。ふたつの柱、つまりはカフカの「外」と「内」を描き、カフカという一人の人間を浮き彫りにした作品である。 カフカは、ある意味、不思議な作品を描いた人だと思うが、時代とその人の成りを知ると、作品理解も深まっていくように思う。 →
2024/09/11
ぞしま
祖父(とその時代)からカフカの死まで。家族、友人、恋人、生きた時代、仕事、病気、そして残された大量の手紙を通して。カフカの小説にはまった人ならば一読の価値ある内容と思う。とても良かった。 割と人間くさい描写が目立つのだけど、「ぼくはきみを愛している(海が海底の小石を愛している、まさにそのように。ぼくの愛はきみに洗われる。きみに対して、ぼくはやはり天が投げ落とした小石だ)」 てミレナに宛てた手紙を読んで、あぁこの人はほんとうにものすごい天才なんだなて思った。 それだけで? もちろんそれだけじゃないのだけど…
2019/01/12
ぷるいち
プラハのカフカミュージアムに行く前の予習として。類似の書籍「となりのカフカ」よりもずっとカフカが人間くさく浮かび上がってくる。こちらのほうがずっとカフカを近くから観察するように眺めているからか。一方でカフカの小説を読んでいることは前提となるような書きっぷりでもある。市民的に生活する人々(父や婚約者)と折り合いが合わず、それでいて女性への強い憧憬を持ち、三年くらい平気で断筆し、死に至る病を冗談めいて笑い、そして結局は自らの死を嘆く、本当に人間らしいカフカ。それでいて、あの奇妙な作品たちと彼は地続きなのだ。
2015/11/08
感想・レビューをもっと見る