岡本綺堂伝奇小説集 其ノ1
岡本綺堂伝奇小説集 其ノ1 / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
波津彬子さんのコミカライズで読んでいたのですが文章で読むと流麗。殷の妲己、天竺の華陽夫人として淫蕩と悪逆により、世を乱した白面金毛九尾狐。妖狐に憑かれた藻こと玉藻の前と千枝松こと千枝太郎泰清。憑かれる前の藻の初々しさと玉藻の猜疑と悪へと導く妖艶な言動が対照的でありながら衣笠やかつての隣人へと心を移す千枝松へ嘆き、嫉妬する場面は藻としての心を垣間見せて余計にその結末が哀しくも美しい。そして因果は雨月物語の「浅茅生」の崇徳天皇の恨みとも合いまり、源平の戦いへと繋がることへとなる。
2012/08/22
紫伊
美しく惹きこまれていく文章で書かれた狐の怪異譚。人々を誑かしていく玉藻は悪女であるはずなのにとても美しい。様々なことがあっての静かな結末。とても美しい一冊でした。
2016/07/01
てんてん(^^)/
いろいろな人にインスピレーションを与えた作品ということで興味を持って読み始めましたが、何よりも日本語の美しさに息を呑み、見事な風景描写に酔いしれました。 玉藻の前は恐ろしい妖狐の化身でありながら、千枝松の前ではずっと藻のままだったのですね。それがとても哀れで女らしくて可愛らしかった。最後はその藻の想いが千枝松の心を動かしたんだなあと思います。ただ、千枝松のキャラクターはもう少し何とかならなかったのかしらと思わずにはいられませんでした。もう少し男気を見せてくれるとよかったのにと。。。
2010/09/22
satoshi
序盤は正義の陰陽師と退治されるべき悪霊という図式で読んでいたのだけれど,途中でふとその図式が揺らいで,玉藻の前に肩入れしつつある自分に気づいて「あれ?」と思った。だから物語の最後は一見意外なようで,でも意外ではなく,すてきな最後だと思った。那須に今でも殺生石と伝えられる石があるというのは知っていたけれど改めて一度見に行ってみたくなった。
2010/09/09
mnagami
ストレートに心に響く物語。千枝松はどんな思いだったのだろう、人の心は本当にわからないと思わせる。悲しい、切ないだけでは語れない物語
2016/09/21
感想・レビューをもっと見る