アリバイ (海外ミステリ叢書《奇想天外の本棚》)
アリバイ (海外ミステリ叢書《奇想天外の本棚》) / 感想・レビュー
NAO
『アクロイド殺し』は、ポアロの言動がちょっと納得のいかない作品だったが、戯曲版の『アリバイ』はなかなか面白かった。ライトが当たる舞台上だけで話が進んでいく。それ以外の場所であったことは、すべて舞台上にいる人物たちの会話で語られることになる。だから、ポアロが勝手にどこかに調査に行ってきたと語っても、小説のときほど違和感がなくなる。そして、言葉の応酬だけであるため、会話がピリッとしまってくる。ポアロとシェパード医師の会話のなんとスリリングなことか。話している人物の表情まで見えてくるようだ。
2023/11/28
geshi
傑作『アクロイド殺し』の戯曲版。原作の衝撃を越えることは不可能なので劇としての余韻を味わえる形になっている。元は隠していた関係性を分かりやすく出してキャラクターの立ち位置を平易にしているのは正しいアレンジだと思う。何より現場が目の前にあるので、トリックがそこにあったと見ている側に確信させる実在感の強さがある。原作よりもポアロを紳士的にしたことと、あるキャラの設定を変えたことが効果的で、ラストでクリスティーのポアロではあり得ない行動を取らせるのが胸に響く。
2019/07/19
タリホー
『アクロイド殺し』の戯曲化。映画「情婦」に出演したチャールズ・ロートンが世界で初めてポアロを演じたとして有名。話の流れは原作に沿っているが、ポアロに女中がいたり、凶器の短剣が本の栞として使われていたりと、所々に改変やカットされた部分がある。原作ならではのトリックが使えないため、タイトル通りアリバイの面をポイントにしている。結末については舞台劇として妥当な落し方かなと思うが、やはり物足りなさは感じる。
2020/03/12
engidaruma2006
アガサ・クリスティの代表作『アクロイド殺し』の戯曲化作品。小説版のあの有名な技巧を、戯曲ではどうするのかが一番の関心事だったのだが、このアレンジは見事。こっちの方がポアロの推理に無理が無いし、不満も残らないだろう。 山口雅也さんの訳文が凄く読み易くて良かった。当初はポワロのセリフが小説版よりへりくだっているのが気になったが、最後の場面で逆にそれが生きてきて、胸に迫る物があった。これは文句無しの傑作。
2019/07/15
しゅー
★★ クリスティーの有名作品を当時の劇作家が戯曲化したと言う珍品を、ミステリ作家山口雅也さんが新訳。有名作だけに私のように犯人を知って読む読者の方が多いことでしょう。巧く戯曲化されているな、とは思います。ただ、あくまでもクリスティーファンが楽しむものですかね。
2019/08/23
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