東洲しゃらくさし (PHP文庫 ま 21-1)
東洲しゃらくさし (PHP文庫 ま 21-1) / 感想・レビュー
Makoto Yamamoto
突然現れて消えてしまった東洲斎写楽関連と思って手に取った。 実際そのつじつまがぴったり合う構成になっていて納得。 外題の『東洲』江戸を指している。 当時の文人たちの生きざま、歌舞伎等の仕組み等が伝わってくる。 それにしても蔦谷重三郎の眼は素晴らしい。 写楽ばかりでなく、十返舎一九、鶴屋南北もしっかり見出していた。 狂言作家並木五兵衛の視点での東西の芝居の違いも伝わってきた。
2019/03/15
mashumaro
東洲斎写楽とは、なにものであったのか。歌舞伎の世界、稀代の版元蔦屋重三郎とからめて、この時代の文化の醸成を生き生きと感じさせる。時の政権に翻弄されながら隆盛と衰微を繰り返し、その影には多くの涙が流される。こうやって今の時代に日本文化は伝えられてきたんだなと思うと感慨深い。彦三の結末はやはり謎に包まれたままだが、慎ましくも良き人生があったと思いたい。
2022/01/16
タツ フカガワ
上方の人気狂言作者並木五兵衛が、請われて江戸に江戸へ向かうことに。やがて江戸から写楽という絵師の評判が聞こえてきたころ五兵衛は江戸に向かうが、上方と江戸の芝居のやり方の違いに戸惑うばかり。写楽の絵の魅力との対比から描かれる歌舞伎の虚実が面白い。読み終えて、東洲=江戸だったのかと、改めて書名に納得しました。
2017/09/11
筋書屋虫六
謎の浮世絵師・東洲斎写楽の出自に迫る時代小説かと思いきや、嗜好や肌感覚も違う東西の劇界で、上方から江戸に渡る芝居者の勝負心や艱難辛苦の方が読んで面白い。江戸の初興行で大失敗した並木五兵衛(五瓶)の起死回生の一本が『五大力恋緘』とは!しかも負けた心境の五瓶を「兄さんは辛抱が足らぬ」とぴしゃりと言い放つ二代目菊之丞の言葉が深くて、思わず心を鷲づかみされました。
2010/05/05
renren
写楽というより、並木五兵衛(五瓶)という劇作者が、上方歌舞伎から江戸歌舞伎へ移ったときの風土の違い、価値観の違い、カルチャーショック!、同時代の文人たちの営みをありありと描く本。元禄、蔦屋に写楽に歌麿、山東京伝に十返舎一九、錚々たる劇作者たちに戯作者たち。つくづく豪華。写楽(彦三)が狂言回しっぽくありつつも、人の、ほかでもない「生きている」命のあかしを描きとめたい観察眼と感性の持ち主として描かれているところも好感。
2011/11/09
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