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倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫)

倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫)

倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫)

作家
皆川博子
出版社
PHP研究所
発売日
2011-11-17
ISBN
9784569677538
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倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫) / 感想・レビュー

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徒花

全体的に文章の密度が濃いのに加え、物語の中でさらに物語が紡がれ、しかもそれは複数の人物が次々と続きを書いていくというものなので、構造的には非常に複雑なはずなのだが、読んでいてあまり混乱をきたさないのは著者の筆力、もしくは構成力のたまものだろうか。しかもそれでいてきちんと「殺人事件」が起こり、しかもその解決が物語中の物語と物語の中における現実をリンクさせながら、読者をきちんと納得させるだけの結末に持っていく自然さもある。地力が違うなぁと感じる。

2016/07/31

青蓮

作中作の二重ミステリー。戦時中のミッションスクールが舞台。美しい1冊のノートに綴られた「倒立する塔の殺人」。現実と物語が絡み合い、何処までが真実なのか読み手を眩惑する。コンパクトにまとめられた作品だけれど、大作を読んだかのような充足感があります。少女達の間で交わされる友情以上恋愛未満の微妙な感情、エスと呼ばれるそれが懐かしいような眩しいような。作中に登場する文学作品、音楽、絵画を私も味わってみたいものです。

2015/06/10

naoっぴ

ピンク色の少女が描かれた表紙でYA小説。ということで軽く読める話かと思いきや、とんでもなかった。皆川博子さんの紡ぎだすストーリー世界は凄いなぁ!女学校の気高いきらびやかさと、終戦前後の過酷で混沌とした世情、そのなかで起きる女学生の死と失踪のミステリーが絡まり合った、謎に満ちた芳醇な世界。謎の真相にも驚くが、質量ある筆致で描かれる女学生たちのりんとした美しさや、愛と憎悪の一体感にため息が出る。物語の濃密なうねりはラストで鮮やかにかつ甘やかに収束。物語の構成、そのたたみ方まで素晴らしかった♡

2016/12/07

あんこ

皆川作品は耽美でため息が出るほどに美しく、恍惚とする。読書の幸福。しをんさんの解説もよかった。手記、「倒立」、語りからなる作品だけど、一度はすべてが溶け合って錯乱する思いがしたが後半はすっきりとして、霧が晴れていくような感覚。「エス」小説の王道っぽさもあり、古典文学や絵画も織り交ぜてくるあたりが堪らない。少女たちとの別れが酷くさびしかった。

2017/02/09

kana

入れ子細工のように『倒立する塔の殺人』という本の中に広がる謎めいた物語から、外側の物語へと、ラストにかけて畳みかけるように収束していく展開に、主人公と同様に気が狂いそうに。でも、だんだんと、心地よい気分になって、うっとりとする。想像以上に戦時下の女学校の様子が色濃く描かれていましたが、戦争描写以上に、少女であるが故の、歯止めのきかない激しい愛情と憎悪、そして悪魔のような閃きが恐ろしく、同時にその妖婉さが大変魅力的に感じるのが不思議です。恩田陸の『麦の海に沈む果実』のあの雰囲気が好きな人にぜひ薦めたいです。

2012/08/29

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