天明の密偵 (PHP文芸文庫)
天明の密偵 (PHP文芸文庫) / 感想・レビュー
ソババッケ
江戸後期の日本民族学者として知られる菅江真澄の生涯を描いた物語。この小説の面白いのは、真澄が松前へ滞在した時期が、天明8年(1788年)からの4年間で、田沼失脚後の松平定信の蝦夷地政策への転換点に重なることから、真澄と旧藩主であり、現老中の松平信明とを結び付けて描いたことにある。それにしても意次と定信の確執は凄まじいものがある。定信は政変後に、田沼時代の蝦夷地探索方の幕臣を徹底的に弾圧し、更には松前藩を転封に追い込むべく画策する。この時代の幕府の蝦夷地政策を知る上でも興味深い一冊。★3.5
2013/08/24
午前0時
10 読了。あとがき、解説まで読んで、この本が完結した感覚を得た。この本の前に読んだ「冬を待つ城」のあとがきで熊谷達也が記した、東北の蹂躙された史実、というフレーズを意識したまま読んだ。今度はアイヌのことも知りたい。その前に、このまま菅江真澄の事をもっと知りたい。
2024/09/02
yamakujira
菅江真澄の謎多き前半生を題材にした小説。田沼意次と松平定信の対立を背景に、真澄の旅を密偵としての探索に設定したのは、フィクションを史実に絡めてえがく時代小説の醍醐味だな。浅間山の噴火に天明の大飢饉が続く当時の世相も興味深い。ただ、どうしても地味な展開になっちゃうのはしょうがないね。改名の理由とか常頭巾の謎とか、あえてあっさりと流しているのがいい。「遊覧記」は読んでみたいんだけれど、ずっと手が出せないままだなぁ。 (★★★☆☆)
2014/03/07
だいゆー
日本民俗学の先駆者といわれる菅江真澄。夢を追い続け漂白の生涯の謎に迫る?! 蝦夷地に渡る道筋に父の故郷(秋田)の地名が出てきてそれも興味深い(^^;
2013/11/30
BATTARIA
田沼意次と松平定信の権力闘争や、蝦夷地をめぐる幕府・松前藩・アイヌ・ロシアの相克等にひかれて読んでみた。 主人公の菅江真澄なる民俗学者については全く知らなかったが、二つの物語が噛み合わぬまま同時進行した感じ。 身分の低さゆえの境遇に納得できず、立身出世を目指すも叶わず、最後はそうした執着から解き放たれて…… という、あまりにも予定調和みたいな終わり方が残念。 林子平や最上徳内、さらには徳川家治らの人物描写は面白かったけど。
2015/05/28
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