霖雨(りんう)
霖雨(りんう) / 感想・レビュー
文庫フリーク@灯れ松明の火
江戸幕府直轄地(天領)豊後の国、日田(現在の大分県日田市)に私塾を主宰する儒学者で教育者・漢詩人でもある広瀬淡窓。その私塾『咸宜園』は淡窓以降も10代の塾主により明治30年まで存続、全国からの入門者は延べ4000人を越え、日本最大級の私塾だったという。士農工商の厳しい身分制度の時代。年齢、学歴、身分の三つを奪って平等とする《三奪》を入門時に行い、女性にも入門を許す独自の教育法を採る。実家である博多屋は代官所御用達、弟の九兵衛が継ぐ。野心と功名心に駆られる郡代・塩谷にさいなまされる淡窓と九兵衛。 →続く
2012/09/09
藤枝梅安
広瀬淡窓は天領・日田の地で「咸宜園」という私塾を興し、弟の久兵衛は家業を継いで博多屋の当主となっている。横暴な代官の無理難題をかわしつつ、なんとか私塾を続けているが、旧広島藩士・臼井佳一郎とその姉・千世が入門を願ったところから、物語が始まる。この佳一郎が歌舞伎でも良く出てきそうな若侍気分が抜けない短慮な役柄で、まぁ「阿呆役」である。葉室さんの小説ではこういう「阿呆」が少しは成長するのだが、この小説では佳一郎は阿呆のままである。千世も良く出てきそうな、慎ましやかだが実は執念深い女性である。(コメントに続く)
2012/07/12
あすなろ
実話を元にした葉室氏作品。しかし最近の傾向に違え、なかなか良かった。広瀬淡窓を軸に、兄弟愛から波紋のように世相や群像、大塩の乱まで描いている。様々な難に見まわれ続けても、心で察して推し量るという心が描かれており、印象に残った。また、大塩平八郎との想いのぶつかり合いが興味深い。特に官府の難に立ち向かう姿の違いは、知ることが多かった。
2014/09/07
なゆ
しみじみ。日田の儒学者広瀬淡窓と弟の久兵衛。何かと権力者から圧力をかけられ、私塾「咸宜園」への干渉にも耐えるなか、佳一郎と千世が入塾したことでさらなる苦難が次々降りかかる。どこまで行ってもおさわがせ佳一郎にイラッとしたけれども、悩まされたことで淡窓にとっては進むべき道が定まったというべきか。葉室さんの話にはいつも風が吹き抜けるが、この「霖雨」では様々な雨が潤してくれる。そういうところも風情があって、また読みたくなるのかも。
2013/03/21
くりきんとん99
今まで読んだ葉室さんの作品から比べると、ずっと難しく読み応えがあったように思う。前半、話がなかなか展開せず、読み進めるのが大変だったけど、儒学者の淡窓と弟の久兵衛の決して諦めず真摯に生きて行こうという姿に感銘した。日本にこんな人たちがいたとは。
2012/06/02
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