手の中の天秤
手の中の天秤 / 感想・レビュー
🐾Yoko Omoto🐾
「執行猶予被害者・遺族預り制度」という架空の法律を通して、過失致死に於ける加害者と被害者、その家族たちの、計り知れぬ苦悩や持って行き場のない感情が描かれる。日常の過失から起こる事件は、いつ何時、自分も当事者になるかも知れず、とても他人事とは思えぬ気持ちでいっぱいになった。どちらの立場へも再生を信じ奮闘する新米係官と、余計な感情移入を良しとしない先輩係官。二人の考え方、事件当事者たちの思い、全てに於いて正解のないテーマではあるが、「人それぞれ」という言葉には救われた思いで、後味の良いラストの括りも良かった。
2016/09/09
おくちゃん🍎柳緑花紅
執行猶予付きの判決が出たとき、もし被害者や遺族が加害者を刑務所に入れるかどうか決める権利を持ったら…【執行猶予被害者・遺族預かり制度】という架空の法律で加害者の様子を伝える係官。上司はチャラン、このチャランが良い味を出し魅力的だ。加害者を恨む権利憎む権利。許すことは生きていく限りないんじゃない?許す必要ある?と言う。第三者の親身な振りをして気持ちを推しはかり土足で踏み込むことに怒る被害者。ちょっとした事で私達は被害者にも加害者にもなる。
2017/10/03
れみ
執行猶予つきの判決が出たとき、加害者の反省具合を遺族や被害者がチェックし刑務所に入れるか判断することのできる「執行猶予被害者・遺族預かり制度」が始まって38年後…その制度の担当係官の経験があり今は大学講師の井川は「チャラン」と呼ばれるいい加減な上司・岩崎とともに担当した事件の加害者や被害者・遺族のことを思い出す…というお話。実際にはない制度だけど、もしあったら加害者側も被害者側も係官の人もみんな精神的にしんどそう…。死んだ人間が生き返ったり事件の前の状態に戻ることができたときに許し許されるとしたら、 →
2018/12/23
なゆ
架空の制度〝執行猶予被害者・遺族預かり制度〟というのが現実にあったら、もし私が当事者だったとしたらどうするだろうか。被害者や遺族が望めば、2年間加害者の生活態度や反省具合を知ることができ、刑務所に入れるかどうかを決定することが出来るというのだが。かつてその係官だった井川が、後に大学講師として講義のなかでいくつかの事例を紹介する形で話は進んでいく。この制度を申請することで、被害者や遺族は少しは救われているのか…というところでとても考えさせられた。先輩係官チャランの存在が、重いテーマをサラッと読ませてくれる。
2015/03/01
紫 綺
文庫にて読了。執行猶予付きの判決が出たとき、もし被害者や遺族が加害者を刑務所に入れるかどうか決める権利を持ったら…という架空の設定。人を憎むこと、許すこととは何か?それは人それぞれ。面白いかどうかも人それぞれ。
2018/11/12
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