幻想植物園 花と木の話
幻想植物園 花と木の話 / 感想・レビュー
コットン
カラーイラストがうれしい花を題材としたエッセイ。マロニエの章で「ヨーロッパの墓では特に芸術家や作家の墓に、花ではない何かを備えていることがある。」として「ロシア・バレエの立役者ディアギレフの墓には、古びたバレエシューズがおかれ…マンレイの墓には、からのフィルムケースが積まれ…」彼らに対して敬意を表す表現手段が恰好良い!
2015/09/05
毒兎真暗ミサ【副長】
一月から十二月までの代表する綺羅びやかな植物をイラストとともに紹介する作品。『幻想』と冠する理由は植物に由来する神話を絡めているからで、月桂樹、アネモネなどポピュラーな花から オオオニバスやサフランの歴史背景(サントリーニ島の壊滅など)まで奥深く教えてくれる。添付の写真がモノクロなのが残念だが、添えられたイラストは独特で目を見張る宇野亜喜良作品。寺山修司も惚れ込んだ作家だと後で知った。ハマナスで高倉健を描いていたのは網走が関係してる?昭和の良い時代を生きた男達が愛する花木を紹介する、そんな優しい幻想譚。
2023/08/01
yn1951jp
巌谷の旅や庭、家族や知人などの思い出にあふれた植物カレンダー。マロニエとブルトン、アンスリウムと澁澤、柿と種村、オリーブと瀧口など亡き人の面影が感傷を誘う。宇野亜喜良の「少女花」も素敵。「フローラ逍遥」と合わせて読むと澁澤との思いの違いが見えそう。次は荒俣の「花空庭園」を読もう。12月には『バンクス花譜集』展が開催される。しばらく植物愛に浸りそうである。「ぽかんと花を眺めながら、人間も、本当によいところがある、と思った。花の美しさを見つけたのは、人間だし、花を愛するのも人間だもの。」(太宰治『女生徒』)
2014/11/16
愛玉子
元々のタイトル『花と樹の話/私の植物誌』を、単行本化を機に出版社が改題とのこと。巻頭の宇野亜喜良さんのイラストは確かに幻想的ですが、内容は幻想というよりノスタルジア、植物に纏わる懐かしい記憶が清明な言葉で紡がれています。期待していた澁澤龍彦的エロティシズム溢るる植物園(どんなだ)ではなかったけれど、これはこれで好きです。私が子供の頃、夜になると窓に何か当たることがあったのですが、犯人は家の前にあった藤の鞘から弾けて飛んだ種だったことや、柘榴の実をもいで友だちとこっそり食べたことなど懐かしく思い出しながら。
2021/06/14
まーぷる@低浮上
宇野亜喜良さんの挿絵が見たくて図書館本で読了。巌谷國士さんの作品は初めてだったけれど、花や木に対しての思い入れや愛情がストレートに伝わってくる、それでいて落ち着いて気品のあるエッセイだった。幼少期から草花に触れる経験が有るのと無いのとでは、大人になってから興味を持つかどうかに大きく影響するんだろうなぁ。ここ数年、時々自宅で花を飾るようになったせいか、どの章も興味深かった。実際に手元で楽しむのも、散歩中に偶然出会うのもどんなシチュエーションでも心を癒してくれるのが花や木、植物なのかもしれない。
2020/07/22
感想・レビューをもっと見る