生きる故(ゆえ) 「大坂の陣」異聞
生きる故(ゆえ) 「大坂の陣」異聞 / 感想・レビュー
とん大西
大坂の陣。先月『城塞』を読んだからか登場人物のキャラに司馬さんへのオマージュを感じてしまいます(気のせいかな)。盗賊の手先として糊口をしのぐ少年・飢(かつ)。剣の腕はめっぽう強いが、不遇な生い立ちから世を厭い、斜に構え孤高を貫く。喰えりゃいいやと大志もなく参じた斜陽の脱け殻大坂城。出会った歴戦の強者は後藤又兵衛。歴史の大きな分岐点は飢の人生の分岐点でもあった。死ぬ為に生きる又兵衛、幸村ら戦国の英傑達。それは逞しく潔く。殺戮の恍惚に身を委ねてきた飢の瞳に彼らの生き様が語りかける。飢、おぬしは何故生きる-。
2019/07/07
いつでも母さん
此方、死に場所を求めて戦う者、片や生きる為に戦う者。それが大坂の陣で共に豊臣方として立ち、自身の生き様を問うのだ。生きるために戦う者・飢、己の出自を忌み嫌いやみくもにただ生きてきたはずが、又兵衛に愛され、清左衛門に弟のように慈しまれ、信繁に諭された飢よ。何の因果か父親との邂逅があり、全ての願いが『生きる事』に結実される。そうさ、菖蒲を守り共に生きることが与えられた戦いなのだ。飢を通して生死を、男の在り方を見た感じがして面白く読んだ。
2017/02/11
としえ
母や義父・弟妹からも厭われ、村を飛び出し拾われた盗賊の仲間内でも厭われ、やり場のない怒りを身の内にためたような少年・飢(かつ)は、生きるために戦に出ることを決意する。が、大阪城で出会った後藤又兵衛や真田信繁、長宗我部盛親らの剛の者は、死場所を求めて参戦するという。飢には到底理解できないが、それでも又兵衛と接するうちに少しづつ考えも変わってくるあたりがいい。ちょっと都合良すぎかなと思うところもあるが、それでも戦場の鬼気迫る様子は惹きつけられ、飢が又兵衛を親父と呼び慕うあたりは胸を打たれ、うん、面白かった。
2016/12/29
マサキ@灯れ松明の火
鬼子として育った飢(かつ)。望まれなくとも生きると決め戦う場を求める飢。死に場所を求め、大坂城に入った後藤又兵衛。真逆の考えを持つ2人が出会い、共に戦ううちにそれぞれの心に芽生える互いを認め、慕う気持ち。血の繋がりではなく、心で繋がった父と子。飢は、生きる!死んでいった者の想いを胸に、大切な女性(ヒト)を守る己の戦を生き抜く!
2017/07/23
サケ太
熱い、熱い物語。関ヶ原合戦後望まれずその生を受けた少年。恵まれぬ幼少期から村を出て盗賊に。彼は飢(かつ)と名乗る。望まれぬのなら生きる。それが復讐。自分の居場所を探して向かったのは戦場。大戦の火種燻る大坂城へ。道中出逢ったのは、死場所を求める後藤又兵衛。壮絶な戦描写は勿論。作品に引き込まれ、凄まじい疾走感の中に落とされるのは流石。メインは後藤又兵衛、真田信繁とはいえ、大坂城五人衆のキャラが濃すぎ。飢の過去、生き方、コンプレックス。理解できない武士どもの生き方。何故死ぬために戦うのか。最後まで面白かった。
2016/11/30
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