風神雷神 Juppiter,Aeolus(ユピテル アイオロス)下 (PHP文芸文庫)
風神雷神 Juppiter,Aeolus(ユピテル アイオロス)下 (PHP文芸文庫) / 感想・レビュー
エドワード
望月彩が出会う、マカオ博物館の油彩画と古文書。画は「ユピテルとアイオロス」。ギリシャ神話の雷神と風神だ。古文書の著者はファラ・マルティノと読める。そして古文書の中に「俵屋宗達」の漢字。それだけだ。それ以上は何もわからない。原田さんの筆は、天正遣欧使節と俵屋宗達が、ヨーロッパ大陸をローマへと進み、ローマ教皇に謁見する旅を生き生きと描き出す。自分がその場にいるような圧倒的な臨場感。「アートは、歴史と言う大河が過去から現在へと運んでくれたタイムカプセルのようなもの」その通りだ。だから歴史と美術はやめられない。
2023/06/29
yamatoshiuruhashi
天正遣欧使節と宗達はついにローマへ到達する。物語は岐路を描くことはしない。ジェノヴァの港で艀を待つところで現代へのエピローグへと戻る。マカオに残されたユピテルとアイオロスの絵は宗達の絵なのか。ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョも登場し、宗達の残された資料の少なさこそが想像の翼を拡げて歴史小説を真らしく読ませてくれる。四人の使節は、殉教者、棄教者、追放、隠遁と運命は過酷なのだが、その最大の輝きのところで息をつくことができる構成に安堵感。面白かった。
2023/01/23
chietaro
俵屋宗達が自由に物語の世界で動いていました。原マルティノとカラヴァッジョの三者が偶然集うことは歴史的にありえないかもしれません。ただ、同じ時代を生きた同士として、通じ合うものがあったとしてもおかしくはないと思います。風神雷神は俵屋宗達にとって、父上との絆でもあり、彼にとって信じるに足るものだったと思いながら読みました。時代背景や美術史、もっと学びたくなりました。
2022/12/30
藤井宏
現在とはくらべものにならないほど心理的にも物理的にも遠かった欧州を訪問し、これから才能の花を咲かせるであろう2人の若き画家が出会い交流する物語を読み終えて、爽快な気分です。画家の情熱がまるでオリンピックの舞台で最高のパフォーマンスを見せる選手の姿のようでした。少し前に読んだマハさんの「異邦人」よりもこちらの方が好みでした。
2023/04/28
Y.yamabuki
下巻に入り、遣欧使節はゴアからヨーロッパへそしてローマへと旅を続ける。その間の苦労とヨーロッパでの歓迎ぶりが分かり、当時の空気感が伝わって来る。相変わらず見たもの何でも絵にしようと精力的に町を動き回る宗達の姿は変わらない。そして彼には後に多大な影響を及ぼしたであろう大きな出会いがあった。日本の安土桃山時代と東南アジア、ヨーロッパのこの時代を結び着けて感じることが出来た。エピローグの彩の台詞「美術は、歴史という大河が過去から現代へと運んでくれたタイムカプセルのようなものだ」が印象的だ。
2023/05/15
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