ゴサインタン: 神の座
ゴサインタン: 神の座 / 感想・レビュー
なゆ
パラパラッと見て、〝ネパール〟の文字が見えたので読み始めた。言葉も通じないネパール人の女性を妻に迎えてからの、結木輝和に降りかかる怒涛の5年。とにかく、気の毒ではあるけど輝和が好きになれなくて。投げやりで無気力なのは、見えない力のせいだったのか?よくある豪農の歴史からすると、その見えない力とはもしや…?大きく分けて、没落、再生、ネパール。神懸かり、新興宗教的な方向に話が向かっていくのには、少々挫けそうになったけど、ネパールに入ってからのこのラストには大満足。そう、ものすごい遠回りだけど、やっとこれから。
2016/01/30
クリママ
神奈川に近い都下に古くから続く豪農の息子。結婚相手が見つからず、ネパールの女性と集団見合いして結婚する。現代の農業についての社会派小説かと思ったが、オカルティックな出来事、新興宗教まがいの集まり、そして、一時は疎ましいとさえ思っていた妻に引きずられるように全財産を失う。日本での出来事に多くのページが割かれているが、彼女を追っていったネパールでのことのほうがより印象深い。生活、価値観、あまりの違いだ。篠田節子は現地で、何を見、何を感じたのだろう。ネパールを題材とした多くの著作で、いつも考えさせられる。
2017/02/08
星落秋風五丈原
豪農の跡取り、結木輝和はネパール人のカルバナと結婚したが、両親が相次いで死に、妻の奇異な行動で全財産を失う。怒り、悲しみ、恐れ、絶望…揺れ動き、さまよいながら、失踪した妻を探して辿り着いた場所は神の山ゴサインタンの麓だった。現代人の根源にある、魂の再生を力強く描く第10回山本周五郎賞受賞作。確かに長編作品ですが、実際の頁数以上に長大なドラマを感じました。前半は贖罪、 後半は再生あるいは新生、といった物語ですね。
2005/01/20
伊藤勝大
☆☆☆
2018/09/16
茶幸才斎
土地の有力農家の跡継ぎ、結木輝和は、業者の斡旋でネパール人の妻、淑子を迎えた。やがて相次いで父母が他界し、奇跡を起こして生き神に祭り上げられた淑子の振る舞いによって、金も家も土地もすべて失っていく。神懸かった淑子の言動のまま、なす術なく次々と散財し没落していく照和の姿に、カフカ的不条理に似た薄ら寒さを感じた。第一次産業の衰退と対照的に描かれる、持たざる者たちの共同生活がもたらし得る健全な生産性、それは、淑子を探しにネパール奥地に分け入った照和が体験する現地の過酷な暮らしの一端につながる。深くて面白かった。
2010/12/15
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