ミステリー中毒
ミステリー中毒 / 感想・レビュー
曲がった式
ミステリー雑誌に連載された随筆集。前半は読んだミステリーのプロットやあらすじの一部の紹介が多く、あまり海外ミステリーを読んでいない私にはちょっと退屈だったが、後半、当時の世相や事件に対する著者の考察や、仕事や趣味(昆虫採集)の記述が増えてきて、結構楽しめた。後年の『バカの壁』等の著書につながっているように思った。ボリュームのある海外ミステリーを漫画を読むように仕事の合間に大量に読むとか、還暦過ぎてゲームにハマり徹夜したり、それを短時間で極めるなど、頭の構造が凡人とは違うなと思わせるエピソードも面白い。
2019/04/21
ナハチガル
著作に書評集は少ないが、養老先生は私が最も信頼する書評家の一人である。本の紹介にかこつけて、まるで思いつきのように言いたいことを言いながら、その実哲学的で深い、その語り口が最高なのだ。言ってることやスタイルは『バカの壁』とあまり変わらないから、あれが奇跡の一冊だったのではなくて、同じことをしていたらたまたまヒットしたのだということがこの本を読むとよく分かる。ゲームの話が大半で、本についてまったく触れない回があるのも自由でいい。平安京エイリアンからディアブロまでプレイされていたとは恐れ入ります。A++。
2023/08/29
teddy11015544
大体は読んだミステリーの紹介が軽くされているのですが、その間にちりばめられたヨーロー先生の意見がためになります。その後本になった様々な話題や考え方の根本はここにあります。それにしてもすごい読書量ですが、ゲーム遍歴の話も出ていて、規格外の脳と身体の容量・機能に感激しました。2000年発行の本を20年ぶりに再読しましたが、ここで紹介されている本の中で、古典として生き残っているミステリーはどのくらいあるのでしょうかね。新幹線に乗る前に2種類買ったミステリーがどっちも下巻だった、という話はずーっと覚えてました。
2021/12/06
hoco
小説推理に1996年から2000年まで不定期連載されたものの書籍化です。ミステリの解説はさておいて、自分にとって本を読むとはどういう行為だろうかと、なぜか哲学的な問いを立ててしまうのが養老孟司を読む楽しみですね。(引用)小説はもともと、そうした「一回限り」のできごとを、リアリティを持たせて伝達するものである。それが「文学」…ヒトは脳に連合野という部分を創出し、そこから言語が生じ、言語による内的世界が生じた。…おかげで動物がただの一生を生きるところを、人間は何生も生きることになる。
2021/05/27
つちのこ
養老先生がここまでミステリに凝っているとは意外であった。スティーブン・キングやウイングフィールドのファンというのも私と同じの好み。かといえば、馳星周『不夜城』や『将軍の娘』『ジュラシック・パーク』なんかも出てくるんで、幅広く読んでいるようだ。本の話もいいが、それ以上に虫の話が面白い。著者は知る人ぞ知る昆虫マニアである。随所に出てくる昆虫採集や標本の整理についてのウンチクは楽しく、そんな意味ではミステリガイドと虫の話、私にとっては二度おいしい作品であった。(2000.9記)
2000/09/18
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