砂漠の船
砂漠の船 / 感想・レビュー
星落秋風五丈原
出稼労働者の両親の元で淋しい幼年を過ごした幹郎は、団欒のある平凡な家庭を第一に生きてきた。直木賞作家が描く罅割れた家族の肖像。 そこはあなたを必要としてくれる場所ですか。 しがらみ、思い出、因縁、全てを振り切り、壁を越える決断ができますか。
2004/11/18
しらたま
両親が出稼ぎにいき、祖母に育てられた幹郎。自分は家族第一でと、団地住まい・地域限定社員としてまっとうに生きていると思っていたが。実直で家庭的な?幹郎は自分の価値観に固執し、妻や娘への負の影響がわからない。理想に思っていた故郷の暮らしは闇の部分も多く、母も蝕んだのに。妻は不満を溜めこみ娘も迷い続けた。娘の独立後夫婦は別居。「疲れて戻ってきて家事をする生活はもう限界だ」どの口が!?と思う女性読書の山が見える。タイトルは、昔父に買ってもらった教育雑誌のタンカーか。祖母の目を逃れて夫婦を楽しんだ父母が、哀れとも。
2021/09/30
tama
図書館本 「お母さんがなぜ?」というところがイマイチはっきりしていないままでしたが、全体としての「いやな感じ」は十分に「楽しみ」ました。地域に根ざすってそんなに大事かね?娘に「こんなに巧いとは知らなかった」と、思ったとおりになぜ言えぬ?なんだ、洗濯くらい自分でしろ!と主人公に言いたくなる作品でした。差別されてた家族の話がどうにも溶け合ってないなー。
2013/10/21
鈴子
書かれているのは、どこにでもいる普通の家族。ところが…。家族はこうあるべきと理想像を貫く主人公。長年の不満を溜め込んだ妻。やりたい事をしたい娘。父親、母親、子供それぞれが責務に押しつぶしされ、本来は居心地が良いであろう家庭、家族にヒビが入っていく。たとえ家族でも、なかなかわかり合えない事ありますよ。篠田節子さんの毒筆に吐息。
2015/04/06
味噌蔵
著者のドラマ化もされた「百年の恋」のシリアス&リアル&ダーク版といったところでしょうか。家庭第一と言いながら、本当の意味で家族のことを考えていない40代主人公・幹郎。「地域に根ざして家族仲良く暮らす」という偏執的と言えるほどの信念が、自身の左遷や妻との諍いにつながり、さらには高校生になる娘の心にまで悪影響をもたらしていく。こういったテーマになると、篠田さんの毒筆(毒舌)が冴える。幹郎の不器用な実直さと頑迷さを描くバランスが絶妙。ある種の再生に向けて兆しがあるのが救い。読後感は悪くなかった。図書館で。
2013/12/07
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