花が咲く頃いた君と
花が咲く頃いた君と / 感想・レビュー
優愛
「椿の葉に雪の積もる音がする」がお気に入り。花が咲く頃思い出したい、忘れられない人がいる。花に触れる様に大切にしたい人、そんな存在がきっと全ての人にあるのでしょう。"花の色があんまり優しいから、今にも泣いてしまいそうだ"そう、だから悲しい心で花は見ない。静かな心で眺めるのです。繊細な花の色を心に写しとるように。どうか思い出の色で記憶を彩りながら生きていって。強く、優しく、温かい人として。 小規模な世界の中で溢れる花の数々と想いを存分に感じとる幸せは幾多もない。そんな貴重な一冊との巡り会いを嬉しく思います。
2015/01/30
あつひめ
学生時代は、自分が思いを巡らせられるくらい狭い世界の中で悶々としていたような気がする。大人に話せば笑い飛ばされそうなくらい。でも、本当は狭いようでいて底なし沼みたいに終わりがない世界でもある。その中で生き抜いて、徐々に心の脱皮を続けていつの間にか鈍感を装うような大人になっていく。植物は他の植物の事は意識していない。今の自分の咲く場所、季節、お日様・・・自分を中心に考えている。身の程にあった生き方、花たちが自然に教えてくれている気がする。向日葵、コスモス、椿、桜。どの花もそれぞれの美しさがあり比べられない。
2013/04/28
エンブレムT
タイトルと装丁がとても好みです。夏のひまわり、秋のコスモス、冬の椿、春の桜。どの物語も、家庭内や学校、友達間や世間という社会の中で少し弱い立場にいる者を真正面から描いています。状況に逆らったり立ち向かったりせず、あくまでも穏やかに過ごそうとする主人公達。その姿には歯痒いようなもどかしさを感じましたが、それぞれのとてもリアルな結末には、痛みとともに揺さぶられるモノがありました。『椿の葉に雪の積もる音がする』は特に。淡々とした日常の描写のあとから、ぶわっと感情が追いかけてくる感じが凄かったです。
2010/11/06
lonesome
四つの短篇、どれもすごくよかった。中学生や高校生の思春期の青春、恋や別れ。「椿の葉に雪の積もる音がする」はなんと悲しく、けれど素敵なタイトルだろう。そして「僕と桜と五つの春」は豊島ミホ流の「蹴りたい背中」だ。もし自分が主人公でも吉谷のようにカナハギさんのことを好きになるだろう。そして物語の最後、まさに春が近付きつつある今読めてよかった。原題・「君は桜」。そっちも捨て難い。自分の好きな下北沢のあの桜を今年も見られるかな。そんなことを思いながら読んだ。
2014/03/18
kishikan
誰のお薦めだったか忘れてしまったけど、とにかく豊島ミホさん初読み。まず本のタイトル(字体も!)と表紙が良いね。約50ページの短編4作で、いずれも花のシーンと君との思い出、という語り口になっている。その君はと言えば、友人、お爺ちゃん、知らない人、好きな人、なんだけど、中高生の多感な時期に感じる様々な思いや感情が、とても繊細に描かれていて、各編とも深く感じ入ってしまう。全ての作品がお薦めだけど、僕としては「コスモス・・・」「椿の・・・」に感じ入ってしまったし、「僕と桜・・」は青春時代が蘇ったよ。これは名作!
2013/10/01
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