金色の獣、彼方に向かう
金色の獣、彼方に向かう / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
本当に恒川さんの作品には外れがないというか、どの作品も恒川さんにしか出せない(書けない)世界観で覆われています。本作は4編からなる短編集で、正直他の作品に比べると印象が若干、薄めかなと。というのも多分、自分が恒川さんの完成度の高すぎる文章に贅沢にも慣れてしまい、キレイにまとまりすぎている印象が残りました。4編それぞれが個性豊かなのは間違いないのですが、どの章もとても短編とは思えないほど物語の‘質感’がハンパないです。いつも読むたびに思いますが、本当に恒川さんの頭の中はどうなっているのか不思議でなりません。
2014/08/24
文庫フリーク@灯れ松明の火
黄昏(たそがれ)時は誰そ彼時、そして逢魔が時。そんな逢魔が時に、するりと迷い込んでしまう異界‐恒川ワールド。恒川作品で初めて読む、実際の歴史絡めた「異神千夜」鎌倉時代の蒙古襲来と共に、大陸から渡って来た神獣?窮奇(きゅうき)宿した巫女と窮奇の使い・いたちのような金色の獣。「名誉はいらぬ。富も求めぬ。代わりに何にも属さぬ。我らは山河をさすらい、密やかな穏棲を求める」の文に故・隆慶一郎さんの描かれた《道々の輩》・山窩が浮かんでしまう。緑の目を持つ金色の獣で繋がる連作短篇集。→続く
2012/08/31
takaC
「鼬」で繫がる物語。so good.
2013/07/30
しんたろー
鼬(いたち)がリンクする4つの物語は、恒川ワールド満載の短編集。時代を超越し、場所を跳躍して、ファンタジーの世界へ誘いながら、根本の「人を見つめる冷静だけど温かい視点」で共感性が強いので、読書の快感に酔いしれられる。秀逸なのは『異神千夜』…元寇の裏話のように語られる濃厚な妖しい雰囲気がタマラナイ!デビュー作に近い味わいの『風天孔参り』も心の闇と光を感じさせる描写が「静かな怖さと切なさ」を表現して、お見事の一言!他の2編も幻想と現実が調和した佳作。未読の作品を読むのが勿体ないと思わせる稀有な作家さんだ。
2018/01/29
エンブレムT
なすすべもなく戦いの渦に巻き込まれていった青年。樹海のふちで1人宿屋を営んでいた男。霞が如き存在になってしまった少女。そして、金色の獣と近く過ごした少年は・・・ただ普通に暮らしていたのだ。けれど日常と二重写しのように見えてくる異世界は、いつの間にか彼らを飲み込み、その人生を眺めていた私をも呑み込み、その異形なる“在らざるもの”が傍らにある世界へと取り込んでいたのだ。そのことに気付いた時の、ゾッと肌が粟立つような感覚と、ずっと揺蕩っていたいと思う感覚をどう表現すればいいのだろう・・・。
2012/10/23
感想・レビューをもっと見る