アウシュヴィッツのタトゥー係
アウシュヴィッツのタトゥー係 / 感想・レビュー
アン
アウシュビィッツ、ビルケナウ強制収容所で、被収容者達の腕に識別番号を彫る役についたユダヤ人のラリ。彼は抵抗を覚えながら、救われた自分の命について考え特殊な仕事をこなし、ギタという瞳の美しい娘に出会います。ナチス支配下において実際にタトゥー係であった人物の話をもとに綴られた物語。背負った運命の辛さや恐怖、したたかに生き抜く意味、愛の尊さ…。解説にあるように彼は後世に語り継ぐための証人として、神から遣わされた人物なのかもしれません。二人が寄り添う写真や息子さんによる両親への深い感謝の思いに胸が熱くなります。
2019/10/08
どんぐり
緑のインクをひたした布切れを傷口にこすりつけながら針で番号を彫るユダヤ人。アウシュヴィツ=ビルケナウの強制収容所のタトゥー係をモデルに描いたフィクションである。ユダヤ人の貴重品を押収する「カナダ」と称する倉庫での選別、ガス室の遺体を処理する特殊労働隊、大きな石をひとつの場所から別の場所へ運ぶことをくり返しては作業に遅れた者が撃ち殺されるなど、ユダヤ人であることが罪であるかのように多くの者が死の歯車に呑み込まれていく。そのなかで、政治局直轄のタトゥー係は、親衛隊員の管轄外にある立場を利用して同胞のユダヤ人や
2020/01/18
chimako
アウシュヴィッツの話は辛い。わかってはいるが知らぬ顔で素通りするのは憚られる。これは厳しい収容所で芽生えた恋を貫いた若い二人の物語。周りの夥しい数の収容者たちとそれを監視する親衛隊、そこに出入りする地元の人々の物語でも歴史でもある。生きるために同じ被収容者に番号をタトゥする係になったラリはスロヴェキアの青年。左腕に彫られた番号は32407。人に番号をふって管理するなどあり得ない、そう思いながら来る日も来る日も番号を彫り続ける。収容所での日常は地獄だが絶対に生き延びる。その強い想いがやがて奇跡を呼ぶ。
2022/02/07
キムチ
アウシュヴィッツ関連の本の出版は留まる事なく続いている。それは人間がした行為として、けっして目を逸らしてはならぬ事実、而も未だに解明検証が継続する歴史的行為だから。私もこの1年、意識して読み続けた。その中では比較的語りが穏やか。訳者の一人が金原氏と言うこともあり、青少年向け?とも感じられる。ラリとギタの恋愛を絡め、成就まで綴られる。モデルはあるがフィクション。タトゥーを職としたお陰で与えられた特権的立場は「アウシュヴィッツの歯科医」を思い出した。文面の下に埋もれたおぞましい史実を押し図りながら読んだ。
2019/12/19
モルク
スロヴァキアのユダヤ人ラリは列車に乗せられ着いたのはあのアウシュヴィッツだった。人なつこく、ドイツ語ロシア語ポーランド語…など多国語を話すことができた彼はそこで重労働ではなく収容者の番号を彫るタトゥー係として仕事を得た。回りの人々に恵まれたということもあろうが彼の人柄、洞察力の鋭さがその後の彼の幸運をもたらしたのだろう。悲惨な状況を目の当たりにするなか大切な人ギダと出会い愛を育む。逃げ延びた後での再会は劇的だ。翻訳書であるが読みやすい。巻末の幸せそうな夫婦の写真にほっとする。
2024/08/09
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