この限りある世界で
この限りある世界で / 感想・レビュー
しんたろー
小林さんの新作は、新人編集者・莉子と新人文学賞受賞者・青村の物語と中三少女刺殺事件犯人・美月と篤志面接委員・結実子の物語の二本軸が重なり合う展開。著者らしい様々な社会性を含んだ重めの内容だが、文章の巧さで滞ることなく読み進められた。「美月のような小憎らしい少女っているよなぁ」と思いつつ、相手をする結実子に同情しながら家族の在り方を色々と考えさせられた。青村の繊細さと莉子の未熟さに少々イライラさせられたが、終盤の引っ繰り返しで「なるほど!」と腑に落ちた。本作もメッセージ性強い小林さんらしい作品で満足した👍
2023/09/25
ちょろこ
終盤はぐっと深みを増す一冊。自分のせいなのか…。死という取り返しのつかない自責の念に駆られた大人と同級生を殺めた加害者少女との向き合いを描いた物語。少女に翻弄されつつも向き合う篤志面接委員。会話というレンズを通してお互いの深部を写し出していくような二人の姿は時に強く時に怖く心を揺さぶってきた。終盤、とある驚きを盛り込むことでこれまでの時間、人物にぐっと深みが増すのが良い。喪ったものは還らない。でも向き合う大切さ、そして真剣に向き合ってくれる人の眼差し、そこに気づいた瞬間が再生の物語の始まりなんだなと思う。
2023/07/11
シナモン
「文学賞に落選して、哀しいから人を殺します」15歳の少女による殺人事件。二転三転する犯行動機。果たして本当の動機とは。彼女は更生できるのか。重い内容でしたが読みやすくぐいぐい引き込まれました。緊迫した最後の面接の場面はドキドキが止まらず。 戻らない命に一言が及ぼす影響力の大きさは計り知れず虚しさだけが残るかと思ったけど、篤志面接委員のからくりに驚かされ徐々に胸が熱くなり…。じっくりかみしめて読みたくなるような一冊。素晴らしかったです。
2023/07/11
とん大西
切なくも、希望の萌芽を感じられる作品。大人だからといっても立派なわけじゃない。子供だからといって分別がないわけじゃない。15才の少女がクラスメートの少女を無惨に刺殺した事件。連鎖的に起こった痛ましい出来事。篤志面接委員として加害者少女・美月と対峙する結実子の胸中。何故、美月は犯行におよんだか。…誰しも傷はある。癒えることなどなく、出来ればみつけてもらいたくないものも。そんな、そこはかとなく漂っている哀しみ。そのあたりの空気の濃淡は、小林さんらしい抜群の筆致。細工なしで真正面からきても良かったかな。
2023/07/30
ムーミン
終盤のたたみかけるような展開に引き込まれました。
2024/11/16
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