マンガでわかる戦後ニッポン
マンガでわかる戦後ニッポン / 感想・レビュー
さらば火野正平・寺
戦後70年の節目に双葉社が出した戦後の時代を切り取っている短編漫画アンソロジー。面白く読了したが、収録作の中でも、ちばてつや『風のように』と西岸良平『丹沢の棟梁(「鎌倉ものがたり」より)』と谷口ジロー『犬を飼う』は、戦後日本に関係無いような気がするが。谷口の漫画は老いた愛犬の介護と看取りの記録だが、それを高齢化社会と結び付けて戦後の一幕にするのは少し無理な気がする(次の村上もとか『あなたを忘れない』が認知症を扱っているのでテーマの重複でもある)。西岸のは全く関係ない。双葉社が出してるシリーズだからか?。
2016/02/13
たまきら
う~む、これはすごい。企画の意図がよくわからないマンガ集も多い中、この本には名作がぎっしり入っている。それだけではない。日本のある時代を明確に切り取った作品が明快に紹介されているのだ。編集者にエールを送りたい。「光る風」と同じく内田氏が巻末に解説しているので、既視感があった。どの作品も印象に残るが、岡崎京子とバブル期の説明は面白かった。手塚治虫の「紙の砦」から「JIN-仁-」の村上もとかの短編で締めくくられる流れまで、大満足。秀逸。
2023/09/20
あたびー
「もはや戦後ではない」と経済白書に書かれたのは'58だそうだ。しかし私が小学生の'70年代、上野公園の階段にはまだ傷痍軍人が座っていた。(その後そこはイラン人達の会合所となり、今はただの階段だ)この本は手塚治虫描く戦時中の学生の生活に始まり、高度成長期、バブル期も取り上げられ、正直戦後とは関係ない気がする作品も入っているが、そこも編者の戦後なのだろう。私の感覚では「昭和」ではなく「戦後」と言うならせいぜい'75位までだろうか。巻末終戦を樺太で迎えた少年の老後を描いた村上もとかの作品が奇しくも現在に繋がる。
2022/03/22
更紗蝦
収録作は、手塚治虫『紙の砦』、水木しげる『国際ギャング団』、つげ義春『大場電気鍍金工業所』、はるき悦巳『力道山がやって来た』、ちばてつや『風のように』、勝川克志『ミゼットと電器店』、大友克洋『上を向いて歩こう』、西岸良平『丹沢の棟梁』、諸星大二郎『不安の立像』、かわぐちかいじ『抱きしめたい』、岡崎京子『秋の日は釣瓶落とし』、谷口ジロー『犬を飼う』、村上もとか『あなたを忘れない』。意識的に「特定の時代の空気感」をテーマにしている作品と、結果的に「執筆時の時代の空気感」が記録されている作品に二分しています。
2022/12/29
空猫
錚々たる漫画作家なのでハズレなどある筈もない(既読も多々)。終戦後から昭和の末まで、日本がどん底から高度成長期に入るまでのある風景を描いた、文字通り切れば血が出るような、作品集。つげ義春サン『大場電気鍍金工業所』、はるき悦巳サン『力道山がやって来た』、諸星大二郎サン『不安の立像』、岡崎京子サン『秋の日は釣瓶落とし』、村上もとかサン『あなたを忘れない』が特にお気に入り。内田樹氏の解説は言わずもながだけど、編者が優秀なのだろうね。
2023/04/04
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