陽だまりの偽り (双葉文庫 な 30-1)
陽だまりの偽り (双葉文庫 な 30-1) / 感想・レビュー
夢追人009
短編ミステリーの名手・長岡弘樹さんのデビュー作を3年ぶりに再読しましたが、もうエバーグリーンの輝きを放つ永遠に楽しめる作品集ですね。本書の凄い所は著者が完全に意識されての事でしょうけれど、今では取り上げられるのが当然の凶悪犯罪である殺人事件が5編中一つもない事ですね。殺人が出てこなくても、十分に面白い話が書けるんだよと著者が証明してくれているようですね。それから登場人物の心理描写が実に細やかに書かれていて個々の人物に嘘のない血肉を備えている実在感を感じます。私のベストはやはり老いの問題を描く表題作ですね。
2021/12/07
Tetchy
読者の町にもいるであろう人々が出くわした事件、もしくは事件とも呼べない出来事をテーマにした日常の謎系ミステリの宝箱。人は大人になるにつれ、なかなか本心を話さなくなる。むしろ思いをそのまま口にすることが大人げないと誹りを受けたりもするようになり、次第に口数が少なくなり、相手の表情や行動から推測するようになってくる。そしてそれが誤解を生むのだ。本書を読むと我々は実に詰まらないことに悩んで自滅しているのだなと思う。他人から見れば大したことのないことを実に大きく考える。そんな人生喜劇のようなミステリ。
2016/11/25
夢追人009
諺「災い転じて福と為す」がピッタリと来る人間性を鮮やかに切り取った短編ミステリーの名手のデビュー作品集。『陽だまりの偽り』痴呆老人の過失が偶然に導き出す意外な真実。人の優しさと思い遣りが心に沁みます。『淡い青の中に』離婚した母と不良息子が迎えた危機が意外にも・・・。親子の和解が何より嬉しい。『プレイヤー』駐車場からの墜落死の意外な真相と卑怯な思惑。本書唯一の醜悪な苦い結末。『写心』素人の誘拐犯が知った離婚夫婦と幼児の悲しい秘密。『重い扉が』父と息子の長年の確執が息子のある事件を機に解決する心打たれる結末。
2018/10/15
りゅう☆
認知症を知られたくないプライドが間違いを犯してしまうのか?『陽だまりの偽り』。/自分の罪を子供が被ってくれる?ダメだよ、親がそんなことをしたら…『淡い青のなかに』。/人事異動がこれほど人の心を醜くするのか…再生装置『プレイヤー』なるほど。/誘拐犯となったものの母親の苦悩を『写心』によって覗くことができてよかった。/息子が襲われ友人は重体。犯人への証言をなぜ息子はしない?防犯ビデオに映った映像に驚くも、そこに隠された現実に驚いた『重い扉が』。どれも運命を狂わせるような事態に遭遇する。とことん落とされるのに→
2020/10/11
takaC
いずれも物語内で発生する事件がレア事件なような気がするのだがそんなことないのだろうか。また、小説のオチには感心するが登場人物たちの生活が小説のための架空設定のような感じがして白け気味。
2012/11/16
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