チョコレートの町 (双葉文庫)
チョコレートの町 (双葉文庫) / 感想・レビュー
☆ゆう☆
地元の支店のトラブルで急遽、嫌っていた自分の故郷に帰ることになった早瀬遼。彼の故郷は、チョコレート工場のある町。"中途半端"に栄えてはいるが、彼らの考え方や価値観、少し近すぎる地方特有の人付き合いは、まだまだ田舎的で、独特の閉塞感が漂う。田舎の難しい部分が上手く表現されていた。でも家族との関わり、旧友や別れた恋人との再会を通して、一歩引いたところからこそ見えてくる地元の良さ悪さ。全部ひっくるめて良い意味で"自分の故郷"を受け止めることが出来たのではないかと思う。田舎も都会も一長一短である。(iBooks)
2014/05/19
papako
タイトルと表紙から、勝手にジュブナイルを想像してたからびっくり。愛知の明治チョコレートの工場がある町のお話。会社の都合で故郷の店で臨時店長を務めることになった主人公早瀬。いろいろ思うところのある故郷で過ごし、新しい気持ちを発見する。途中、イヤなことになりそうな予感に何度も中断したけど、最後は読んで良かったと思えました。主人公よりも、恋人のサキ、店の2人や本社の吉村さん。早瀬兄と景子さんなど脇役が地味に素敵で助かりました。『故郷を愛してる』なんかいいよね。チョコの香りに包まれた和食は食べたくないけど。
2019/02/22
@
1時間に1本の電車、見渡す限りの田園、でかければ必ず知り合いに出会う地域の狭さ。地方出身者の私としてはもう共感できるものばかり。狭い人間関係の中で過ごすのが嫌で戻りたくない、でもやっぱり親の元に帰りたいっていう気持ちが心の中で葛藤し続けている私にとってはタイムリーなものでした。地元には地元の良さがある。そして待っててくれる人もいるけれど、手に入らないものだってたくさんある。そうか、離れて故郷を想うってことでも良いんだなって少し思えた。帰るんじゃなくて戻る。やっぱり故郷やもん、出て行ったって嫌いなわけない
2014/10/19
dr2006
タイトルから甘ったるい話かと思ったら、捻じれた郷愁と故郷で今も暮らし続ける人々の鬱憤を深くえぐるビターな物語だった。そう感じるのは故郷を離れて暮らす自分にも刺さる所思があるからか。流石、飛鳥井さんは裏切らない。川崎にある不動産会社で支店長としていた早瀬遼は、急きょ別の支店へ代替店長として赴いた。そこは大きなチョコレート工場がある遼の地元だった。町は工場の経済的な恩恵に頼る中途半端な規模で、遼はそんな町が嫌で上京した口だ。さっさと川崎へ戻りたい遼だったが、両親や兄、友人や元恋人の「今」に巻き込まれていく。
2021/09/26
あゆた
田舎がいやで高校卒業と同時に東京に出た遼。大学を卒業し社会人になった彼が仕事の都合で少しの間田舎に戻って来たときの微妙な気持ちの変化を描いています。これといった大きな出来事も起こらず淡々と物語はすすみ、途中ちょっと退屈してしまったのですが、田舎に対する思い、高校時代の友達、元カノ、家族との本当に微妙な関係、心理状態など飛鳥井さんらしい物語です。私も2人姉妹の長女なので、後継ぎとかお墓などの話はちょっと耳が痛いです。ただ文庫本のこの表紙、ずいぶん話のイメージとちがうような・・・
2013/08/27
感想・レビューをもっと見る