金色の獣、彼方に向かう (双葉文庫)
金色の獣、彼方に向かう (双葉文庫) / 感想・レビュー
yoshida
恒川光太郎さんは幻想小説の作家として、現代の日本で屈指の存在だと思う。特に思うのが過去の作品との既視感が薄いことである。常に斬新で新鮮な異世界を堪能できる。驚嘆すべき手腕だと思う。本作での鍵は「黄金の鼬」。時代を変え、名を変え、「黄金の鼬」は存在する。そして人々はその力に引き寄せられ、また畏怖する。窮奇、雷獣、鎌鼬と時代と共に名を変え生き続ける。そう、元寇から現代まで。手塚治虫さんの「火の鳥」を思い出したが、より禍々しいのだ。「黄金の鼬」の力に惑う人々が儚い。恒川光太郎さんの独創性を充分に堪能できる傑作。
2018/01/01
takaC
短篇集のような長篇。もしくは長篇のような短篇集。金色の獣「鼬」で繋がる物語。
2015/12/01
あん
恒川さんの独創的で幻想的な表現が大好きです。これがホラー・ファンタジーと言うのでしょうね。4つの短編は時代背景が違うものの、「金色の獣」で少しずつ繋がっています。自分の感覚が研ぎ澄まされ、小説の世界にあっという間に引きこまれての一気読みでした。どの短編も期待を裏切らない面白さです。
2014/12/08
miyumiyu
壮大なスケールと世界観に、恒川さんにしか書けない話と、ただただ脱帽。「異神千夜」は、蒙古の襲来という壮絶な歴史的事実を織り交ぜて、不思議な世界を作り上げている。「風天孔参り」「金色の獣、彼方に向かう」は、恒川さんならではのダークファンタジーで個人的にはかなり好み。そして4編ともとにかく美しい文章で、不思議な余韻を醸し出しながら終わるラストが良い。
2015/05/03
スカラベ
4作の短編集。中国神話に登場する怪物の一つに窮奇(きゅうき)という妖怪がいる。この妖怪は、何故か日本の鎌鼬(かまいたち)と同一視されている。小説はこの由来を紐解いた伝記、民話といったテイストも醸し出す。舞台は異世界どっぷりでなく、実在した時代や、樹海、辺境の森などの現実世界。最初の「異神千夜」で、鈴華という巫術師とともに窮奇が海を渡り日本へやってきて、最後にはやがて去っていく。それぞれの話は一見かけ離れたもののようにも見えるが、密に繋がっている。こういった構成力は相変わらず凄い。恒川ワールド、大好物です。
2014/12/13
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