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活動寫眞の女<新装版> (双葉文庫)

活動寫眞の女<新装版> (双葉文庫)

活動寫眞の女<新装版> (双葉文庫)

作家
浅田次郎
出版社
双葉社
発売日
2020-01-15
ISBN
9784575523065
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活動寫眞の女<新装版> (双葉文庫) / 感想・レビュー

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とん大西

叙情的です。ほどよく弛緩した京都の郷愁に耽溺するかのような読み心地。知らず学生時代の自分を重ね合わせながら、森見さんの「夜行」、「ニューシネマパラダイス」、村上春樹作品にみられる若き日の葛藤や謳歌を想起してしまう。昭和44年の太秦、京大生の彼らが出会った女-それは禁断の邂逅。映画産業華やかなりし頃の戦前、次代の女優として期待されていた伏見夕霞。30年の星霜を経て再び放たれたその美貌と愁い。幻影か現実か、躊躇いを失った彼と踏みとどまる僕、そして震える彼女。悠久の佇まいにとけていく慕情がなんともいえません。

2021/05/09

つーこ

銀幕スターに現代人が恋する。そんな設定の話は時々あるがその中でもこれは秀逸だと思う。ノスタルジックな時代設定から始まり、『牡丹灯籠』のようなゾクッとさせる場面あり、ビタースイートな恋愛あり、後ろ髪惹かれるラスト。映画村なんかに行くと、つい誰もが妄想しちゃう昔との交差点。それを巨匠が描くとこうなるのだ!という感じ。昔の活動写真や映画、俳優に私がもう少し詳しければもっともっと楽しめたであろう事が残念でならないが。

2020/05/18

となりのトウシロウ

幻想的な作品。三谷薫は京大文学部1回生。古びた映画館で清家忠昭に会い、意気投合する。太秦の映画撮影所でバイトを始めるが、そこで目の覚めるような美人に会う。しかし、彼女は30年以上前に自殺した大部屋女優だった。誰もが見入るような美人女優を見てみたいものの、過去からきた亡霊というのはやっぱり嫌かな。古き良き日本映画全盛時代をよく知らない自分に取っては、現実感の無い映画の中の世界で、この小説も浮世離れしたモノクロームの映画のような感じがする。しかし、あんまりよく分からなかったというのが正直なところ。

2020/09/30

moonlight

昭和44年.映画館で知り合った京大生の三谷と清家、一方は生身の、もう一方は亡霊の女性と恋に落ちる。なんとも不思議な設定が違和感なく綴られた美しく哀しい物語。TVに取って代わられる前の日本映画への愛と失われたものへの渇望が物語の根底にある。あれ?作者は森見登美彦さんだっけ?と思うくらい京都の情景も濃く描かれていて物語の雰囲気を深いものにしてくれている。表紙の蓮の花は作中の法金剛院だと思うのだが、これからまさに花の季節かな。訪れてみたくなった。

2023/06/22

えみ

ガラス細工のように脆く儚げな純愛。映画を愛し、映画の為に存在する美しき女の哀しき過去と恋のミステリー。そして何よりそんな彼女を愚かなほどに純粋に、切ないほどに清らかに、唯々愛した一人の男。京の町を舞台に静謐な刹那的時代の一瞬、まるで白黒映画を観ているかのように描かれた幽暗な恋愛小説。愛した者は30年前に自殺した大部屋女優でした…という衝撃!薄幸美人の微笑みで幾度となく背筋を凍らせた。まさかのホラーと古き良き時代の映画の引力に最後まで気が抜けない。男女の繊細な心情を驚くほど映した麗筆はさすがだと感嘆。

2020/01/22

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