文豪怪奇コレクション 恐怖と哀愁の内田百閒 (双葉文庫)
文豪怪奇コレクション 恐怖と哀愁の内田百閒 (双葉文庫) / 感想・レビュー
アナーキー靴下
短篇15作品収録。読みたいと思いつつの内田百閒、何を読めば、と悩んでいたところこの本を見つけ読んでみた。怖い物語傑作選として編まれた一冊とのことだがなかなか面白い。さらっとした随筆のような小説で、いずれも外側の怪異ではなく、内側の恐怖を描いているのだ。始めのうちは流石にそんな風に怖くならない、と傍観した気持ちを持つのだが、自分がその場所でその行動を取った、と想像してから続きを読むと、不思議なことにどんどん物語に入り込んでしまい、恐怖に取りつかれてしまう。何度読んでも味わいがありそうな話ばかりなのも良い。
2021/09/01
鱒子
内田百閒の恐怖アンソロジー。短編小説もあれば阿防列車のようなエッセイもあり。何が夢だか本当だか分からなくなります。恐怖かと思えば、とぼけた表現も出てきて。百閒先生はまったく食えないお方です(笑
2021/07/24
がらくたどん
さて内田百閒③百閒といえば夢譚のように聞きかじっていたので、敢えて恐怖小説で編んだ点に惹かれて入手。三上さんの「事件帖」を読んでいて芥川絡みの話があったはずと開いてみたら、結局端から再読してしまった。怪談だって大抵は起承転結もあればどれほど理不尽でも因果・解釈も存在する。百閒百鬼は起点も終点もなく不可解な行為が反復される恐怖が味わえるのがミソ。「亀鳴くや」は芥川との奇妙な遭遇の断片が積み重なる。奇行ではないが確実に病んでいる。累積の怖さが芥川の自殺と百閒の俳句で閉じる。人が壊れて行くのを見るのは怖い。
2023/10/04
踊る猫
百閒の怖さは、わざとらしく騒いだり叫んだりすることの内側にはない。むしろ日常で見慣れたものと思われる現象や事物が意外な顔を見せ、そこに女性や狐や……といったものが居るという、それだけのことの内にも怖さがあると喝破した凄みがあると思うのだ(デヴィッド・リンチの映画でただ単にそこに居るだけの老人がやけに不気味に映るマジックに似てるか?)。東雅夫によって選ばれたベスト・オブ・百閒は純度を増しており、どの一編も迂闊に触れられない怖さがある。私自身百閒とは長く付き合ってきたが、新たな目で読むことができ新鮮に思われた
2021/07/12
まさ
じわじわと迫る怖さを楽しませてくれる百閒。何度も読んだ作品もあれば初めて読む作品も。ほの暗く不安定な世界なのに甘美がつき纏うから短編であってもその文章に酔い浸ってしまう。その時々の気分に合わせて各編を抜き出して何度も読めますね。
2021/11/04
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