彼方のアイドル (双葉文庫)
彼方のアイドル (双葉文庫) / 感想・レビュー
エドワード
「彼方のアイドル」という題名に魅かれる。いくつになっても、人の心はアイドルに憧れている。私もそうだよ。主婦の敦子はひょんなことから大ファンだった男性アイドルグループの20周年コンサートへ誘われる。蘇る歓喜の日々!白髪を染める場面が泣かせる。そして、反抗期の息子・太一の寝顔にヒゲを発見して驚く場面も。「太一は私だけのアイドルよ。」幼い男の子の可愛さ、今いずこ。一重まぶたとホクロにコンプレックスを抱く幼馴染みを描く「君の線、僕の点」もいいね。男女の日常の小さな心の揺れを包む、奥田亜希子さんの眼差しが優しい。
2022/11/06
のんちゃん
社会や時代の固定観念に囚われなくてもいいのではないか?という主題の短編集、と解説の瀧井朝世さんが書かれている。著者の『五つ星をつけてよ』がとても良かったのでこの短編集、文庫になっていたので読んでみた。ミステリーやお仕事小説の様なエンタメ系の小説も大好きだが、たまに、著者の様なすばる文学賞受賞者の書かれる純文学系も読むと読書しました‼️感が満たされ、心の段階が一段上がった気がする😅読後、色々と頑張れる様な気がして清々しい気分になる。瀧井さんは『心地よいマッサージ効果のある小説』と記されている。納得だ。
2022/02/08
mincharos
またやられたー!「魔法がとけたあとも」の文庫改題だった!一話目のシチュエーションCDの話で「読んだことあるかも?」と思い、二話目の一人旅館宿泊、梅酒で酔っ払う話で私は確信した!でも負けてたまるか(?)と、最後まで読む。表題作は反抗期の息子と2人きりで暮らす母の話。うちの子も「くそばばぁ!」なんて言う日が来るのかなあ?と思いながら読んで、アイドルの追っかけにハマる描写にはあんまり共感できなかったけど、子育てが落ち着いて昔の趣味を再開するところには共感。息子が塾で彼女作って、それに嫉妬とか、私もするのかな?
2022/04/23
ゆみのすけ
初読み作家さん。生きていると置かれている立場により求められる「〜らしさ」や刷り込まれる価値観や固定観念。こういったものにとらわれすぎず、もう少し軽やかにわがままに生きてもいいんじゃないかと、とても爽やかに提案してくれる本。5編の短編の中で、私は「理想のいれもの」が好み。姉らしさ、優等生らしさ、妊婦らしさにずっと縛られていた主人公の志摩が弟の意外な趣味と言葉に救われる話。どの作品も作者の主張がさらっと語られ、読者にもするっと入ってくると思う。読むと、しんどかったものが少し軽くなる人がいると思う。
2022/03/06
桜もち 太郎
読んでいて心地よい感覚は相変わらずだ。読了感もとてもよい。5つの作品の短篇集だが、良かったのはやはり表題作の「彼方のアイドル」。女手一つで中学生男子を育てる母親の物語だ。ママ、ママと頼っていた幼いころの息子が「とうとう髭が生えてきて、ついにはくそばばあだ」と反抗期の息子に対しての母親のいら立ちが面白い。自分が中学生だったころのことを思い出す。確かにくそばばあと叫んでいたっけ。まぁそれも正しい大人になるための可愛い儀式というものだろう。意外なのはレビュー数の少なさ。もっと読まれてもいい作家だと思う。
2022/11/17
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