日本推理作家協会賞受賞作全集 46 (双葉文庫 み 7-1)
日本推理作家協会賞受賞作全集 46 (双葉文庫 み 7-1) / 感想・レビュー
セウテス
芝居小屋を舞台に旅芝居の一座の、美しく艶やかな舞台公演の表の姿と、狭い舞台裏で衣食住をしながら町から町への生活の対比を、細やかに描いている作品です。しかし、まるで舞台を観ている様な迫力のある芝居の描き方に較べて、謎解きの醍醐味が感じられず、ミステリーを書きたかったのか疑問に感じます。要するに背景や設定が詳しく描かれて、全体の半分以上が謎を解くための展開と関係の無い話に思えてしまう。謎解きの為の伏線も幾つかは在るのですが、推理する上で繋がらないので、芝居小屋を描いていて、こんな事件もあった位にしか思えない。
2016/05/15
森オサム
第38回日本推理作家協会賞受賞作。旅芝居(大衆演劇)の一座で起きた殺人事件を、小屋主の娘秋子が推理する事となります。しかし、物語の主軸は大衆演劇の世界を描く事に置かれている。白粉の、汗の、酒の匂いが鼻っ面に押し付けられた様な息苦しさで、役者達の絶望的とも思える閉塞感がただ哀しい。ページが少ない為か登場人物が多い割に書き込みが薄く、また終盤の謎解きも駆け足の感は否めない所。ただ、私にはこの位の濃さが丁度良く、これ以上の皆川節は付いて行くの大変なんで、十分満足出来ました。ずっと読みたかった、念願が叶ったよ。
2018/04/30
財布にジャック
日本推理作家協会賞受賞、そして実力派の皆川さんの作品ということで、ちょっと期待しすぎました。やっぱり皆川さんと言えば舞台が外国で思いっきり耽美なもののほうが好みかなぁ。でも、芝居小屋での殺人事件という設定は、魅力的でした。巻末に日本推理作家協会賞受賞作がずらっと載っていましたが、まだまだ未読なものが沢山あって気になる作品だらけで、目の毒でした。
2012/06/30
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
舞台は九州の芝居小屋桔梗屋。主人公はその桔梗屋の一人娘。幼い頃、蘭十郎一座の千秋楽の日に起こった殺人事件と奈落で消えた役者の思い出。時は過ぎ、桔梗屋最後の日に起こった事故……?皆川博子さんの筆は、読者を馴染みの無い大衆演劇や旅芝居の世界に入り込ませる。いつの間にか、暗闇の中にひそみ、煌びやかな衣装でスポットライトを浴びる役者を息を詰めて観ていたかと思うと、一転、楽屋で化粧を落とし、丼飯をかきこむ役者が現れ、気が付くと暗い奈落で血を流して倒れている役者を覗き込んでいる。
2017/06/02
佐島楓
旅芝居一座の奈落で起こった殺人事件。この一座では、過去にも殺人事件が起きていた。迫力ある芝居(歌舞伎)の演出描写、奈落という象徴的な場所、次々めまぐるしく起こる事件、と息もつかせぬ展開。最後の「犯人」との対決もハラハラ、舞台という非日常の中でのどろどろとした事件、堪能させていただきました。
2014/02/06
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