日本推理作家協会賞受賞作全集 59 (双葉文庫 ふ 7-3)
日本推理作家協会賞受賞作全集 59 (双葉文庫 ふ 7-3) / 感想・レビュー
NAO
強烈なカリスマ性を持つ教祖が待ち受けていた神の使徒「七人」。この作品は東方の七賢人や「七人の侍」のイメージから描かれたものだと思うが、新興宗教一派が持つ強大な力と、あまりにも血なまぐさい祭の圧倒的な力に押し潰されそうになる。「伝説なき地」だった荒れ果てた油田地帯は、たくさんの人の血を吸って、今、伝説の地となった。
2017/04/21
καйυγα
涸れた油田地帯に集まる者たちの祭りが始まった。残酷で騒々しく、虚しいほどの猛々しさが待ち構えていた。彼ら彼女らの感情やその先の展開を見越してたのに、まさかの展開と悲しい現実に空いた口が塞がらない。人が死んで、また人が死ぬ。殺し殺され、人が死ぬことでしか解決しない祭り。壮絶でとても読み応えある世界観だった。作中、色んな事を胸に抱き、ワクワクしたり期待したりと、常にページの先を気にして読んでいた。冒険なんて幼稚なことを言葉にすれば楽しそうだけど、本書から生きること、死ぬことの難しさを痛感する
2015/07/14
ken_sakura
ハードボイルドそして誰もいなくなった♪( ´▽`)豪快、野放図かつ大雑把なことに好感。1986年、舞台はベネズエラ。枯れた油田からレアメタルの鉱脈が発見されたことに端を発する野心と欲望の物語。主人公は丹波春明。相棒に鍛治司朗。大道具も小道具も散らかすだけ散らかして片付けない♪(´ε` )登場人物を殺して辻褄を合わせる剛腕\( ˆoˆ )/日本推理作家協会賞長編賞受賞作。薦めてくれたおもしろ本棚の先生に感謝。
2016/11/05
びん
南米には一度も行ったことがないけど、 船戸さんが描く舞台は、TVや映画で観た乾燥の荒野や鬱蒼としたジャングルをイメージと重ねて読んでいる。「伝説なき地」では、監獄、涸れた油田、レアアース、国境警備隊とゲリラに宗教・・・。それに裕福な一族が雇う殺しのプロが加わり、数時間毎に激しい雷雨が襲うベネゼイラを舞台に殺戮が繰り返される。 雷雨をもたらす空同様に全編が暗いベールで包まれているけれど、その中で一際輝くマリアがとっても印象的・・・。今回も船戸ワールド全開のストーリーに興奮が止まらない。(o^^o)v
2017/12/07
Katsuto Yoshinaga
本作は、これまで叛史や革命の「拡散」を書いてきた大船戸が、「求心」力を持った「宗教的カリスマ」による次代の叛史の物語描こうとした作品ではないか。著者はF・ファノンの思想に影響を受けているといわれるが、いみじくも先日読んだ「脳・戦争・ナショナリズム」で触れられていたデュルケムの「集団をまとめるには聖的なものが必要」という考えにも共鳴しているように思う。という風に、大船戸を語ると小賢しい言葉を並べてしまう私だが、本作は単純に『七人の侍」へのオマージュだとも思う。そういう骨太エンタメな一作。
2016/04/08
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