日本推理作家協会賞受賞作全集 77 (双葉文庫 き 18-1)
日本推理作家協会賞受賞作全集 77 (双葉文庫 き 18-1) / 感想・レビュー
Tetchy
内容は海外編と国内編に分かれており、海外編は実に素晴らしい。19世紀の小説から幕を開けるが、その流れは欧米の経済発展、特に産業革命後の新しい世界の幕明けと冒険活劇小説が連動して発展していく様子を実作を並べて述べており、小説が時代を映す鏡であり、またその時代に生きた人々の勢いや息吹さえも感じさせることを教えてくれる。翻って国内編の落差には正直非常に失望した。非常にバランスの欠いた内容となってしまっているのだ。大変惜しい評論集である。本書は論者が趣味に走ったがために傑作になり損ねた評論集である。実に勿体ない。
2015/07/29
chiseiok
読み応え有りの大作。気分屋で忘れんぼで好き嫌いの激しいい北上次郎さんとは思えない、本気の大河評論集。スティーヴンソンの『宝島』から獏さんの『闇狩り師』まで、時間空間を大きくまたいで国内外のヒーロー小説について熱く深く語っています。あまりにも情報量膨大、密度も高いのでいかんせん読む側の気合いが追いつかない。結果、毎日少しづつ、かつ若干斜め読みになってしまいましたが、多分再読しそうだしまあいいかなと。取り上げているジャンルのバランスがやや偏ってる気もするけれど、次郎さんやれば出来るんだなと感心しました(笑)。
2016/10/11
NICK6
対象俎上の数が凄いし、かつ私の読了済が哀しい位、極少なのでおのずと本書理解の質はたかが知れている。と先に弁解致し、おこがましく所感とさせて頂く。勿論冒険小説は大好きで、これまでも今後も私にとって著者は有力な案内人のひとり。さて。海外篇は冒険小説の本質的な切り口で熱っぽく論じて楽しい。一方国内篇は、あくまで「系譜」となる伝奇小説やヒーロー時代小説を幅広く射程内に読み込んでいる為、評価基準も本質から大きくシフトさせていると感じた。伝奇小説として、ヒーロー小説として優れているか否か、って具合に。ま、当然かな。
2023/10/08
Aminadab
親本が四半世紀前の1993年、この文庫が2008年。初読みだが、感服かつ堪能した。1980年代日本に起こった冒険小説ブームの源流を、用はスティーブンソン、和は滝沢馬琴まで遡って、代表的作品をヒーロー像にしぼって検討していく。類書はない。いやはや本当に何でも読んでいる人で、筋書きのまとめ方の手際が鮮やかで読んでいて爽快である。西洋だと第一次世界大戦、1970年頃に、ヒーロー像は危機に直面し変貌を遂げる。日本だと昭和13年以降と同40年代に時代伝奇小説の不毛の時代が来る。中里介山・柴田錬三郎の章がおすすめ。
2019/03/06
シャル
冒険小説とそのヒーローを源流から下ってきて読み解いていく書評集。その圧倒的な読書量と、今読んできたかのようなリアルタイム感は、様々な読書への呼び水となる。個人的に気になったのは英国作家が陥ったという冒険小説の壁かな。あと、ジェームズ・ボンドの原作を読んでみたくなった。
2011/09/19
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