『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫)
『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫) / 感想・レビュー
さらば火野正平・寺
数十年振りの再読。夏目漱石が『坊っちゃん』を書くに至る過程を漫画に。といってもリアルなものではなく、虚実混ぜ合わせたもの。初めて読んだ当時は実話だと思い「へえー」と感心していたのを思い出す。原作の関川夏央が山田風太郎ファンなので、風太郎明治物にインスパイアされた意外な人物の出会いも随所に挟まれる。谷口ジローの絵も後年のスッキリした感じはなく、酔った漱石の姿なぞちょっと気持ち悪い(笑)。後に『かの蒼空に』が描かれる前なので、啄木も生気の無い顔で登場。今読むと「ん?」と思う部分もあるが面白かった。
2015/04/26
ヒロミ
久々に再読。緻密な絵と明治の著名人が次々出てくる感じが山田風太郎を彷彿とさせる。この絶妙にクドい感じの加齢臭まで臭ってきそうな劇画タッチがたまりません。好きだ!一応漱石が主人公だけど明治群像劇といった趣き。これがバブル期に発表されていた漫画とは驚き。わたせせいぞう先生が描いたらこんな濃い漫画にはならなかったであろう(バブルと言ったらわたせせいぞうを思い浮かべてしまうのであった。ちょっと見てみたい気もするが)。坂の上の雲のドラマがお好きな方にも薦めたい。
2015/08/26
へくとぱすかる
たまたま均一コーナーで見つけたが、全5巻なのだそう。続編をいつの日にか読めたらいいな、と思う。ストーリーは「坊っちゃん」執筆当時の、夏目漱石の周辺に起こったできごとなのだが、視覚化するのが困難だと簡単に想像がつくのに、よくぞチャレンジしてくれた、という感想。きっと多数の資料にあたったのだろうなぁ。おかげで明治という時代が目に見える新鮮な経験ができました。
2014/09/15
けやき
【再読】漫画。夏目漱石を主人公に「坊っちゃん」が生まれた時代を描く。山田風太郎の明治ものを彷彿とさせるところが好き。
2023/04/15
Y2K☮
小説の登場人物のモデルは単純ではない。著者にも判然とせぬ程に様々な要素が混ざるもの。今作に出てくる人物も「坊っちゃん」主要キャラのモデルの一人という見方が正しい。最大の読み所は執筆時に漱石が置かれていた状況。間接的に小泉八雲の職を奪った負い目、神経症、そして家庭生活を守る為の心労。漱石文学の原点は精神的なリハビリと現実逃避なのだ。ゴーガンみたいに家族を犠牲にした芸術家よりも社会人としての道を外れずに創作に励んだ彼こそ我が手本。破滅的に生きるだけがクールではない。愚直に切実に己の信じた道を歩む。そんな美学。
2015/04/13
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