坊ちゃんの時代: 凛冽たり近代なお生彩あり明治人 (アクションコミックス)
坊ちゃんの時代: 凛冽たり近代なお生彩あり明治人 (アクションコミックス) / 感想・レビュー
徒花
KUにて。絵柄はぶっちゃけ好みじゃないけど、かなり丁寧に作られていてよい作品だった。漱石先生と黒猫がじゃれあうシーンには癒される。基本的には、漱石先生がどのようないきさつで『坊ちゃん』を書きあげていったのかが、当時の時代描写とともにつづられていて、どこか見知らぬノスタルジーを書きたてられる。あと、物憂げな表情がよい。1冊でとりあえず区切りのいいところで完結しているというのもまたよかった。総合的に見れば、けっこう好き。
2016/09/04
ゆか
私が漱石をあまり好きでない理由として、懐手のエピソードがある。「私も無い知恵を出して講義しているのだから 君もない腕を出してくれたまえ」は、とてもユーモアとは思えない。どの小説の女性像も一緒だし。が、私のようなあまり漱石が好きでない人も十分楽しめる本。日本近代文学のみならず、政治なども面白く読めた。平塚らいてうって、あんな情熱的な人だったとは。山形有朋が、歌を詠むのが好き(しかも下手)など、知らないエピソードもいろいろあり、楽しめた。大学時代を懐かしく思い出しました。近代文学もう一度読み直したいです。
2015/04/25
みつ
何度も読んでいる5巻シリーズのコミック第1巻。漱石が『坊ちゃん』の構想を身近な人々から得るという仮構のもと、時代の空気が生き生きと描かれる。山県有朋、桂太郎、伊集院警視ら国家、警察を象徴する人物を校長、野だいこ、赤シャツに擬え、『坊っちゃん』を彼らに敗れ去る物語と捉える。らいてうと森田草平の恋愛などは事実だが、人物たちもその登場場面も虚構含みであることは、終わり近く(未登場も含め)登場人物全員を見開きで集合写真風に描いたことで明らか。雪の日の水道橋付近、鷗外と漱石の樋口一葉を偲んでの語らいが殊の外美しい。
2021/11/23
長野秀一郎
「『坊ちゃん』は敗者の物語」という解釈(江藤淳が有名なのかな?新潮文庫版の解説になってるし)を下敷きにし、近代化(西欧化)の進む明治日本における敗者たちとその矜持を描いた作品。この場合の敗者とは必ずしも社会的弱者を指さない。漱石・鴎外・一葉・ハーンなど、いまだ名の残る文豪たちもまた敗者として描かれる。敗者たちに焦点を当てた結果、読後感はどうしても寂しい。だがその寂しさは美しい。私はこの寂しい作品を愛する。評価5
2017/09/10
阿部義彦
古本屋で全5巻セットを買いました。とりあえず始まりの1巻を。事件屋稼業でペアを組んだ谷口ジローと関川夏央が明治時代を描いたシリーズ。と言っても最初は夏目漱石の『坊ちゃん』の制作過程を中心にそのモデルと思しき人々との関わりを描いたのが好評で続編が作られるに至ったのが正確な所だそうです。森鴎外、樋口一葉、平塚らいてう、正岡子規等がキャスティングされて読み応え充分!漱石の精神的脆弱さに焦点が当てられ病跡学的アプローチもされてます。資料に当たるだけでも大苦労でしたでしょうに。ゆっくりと読み進もう。
2023/10/20
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