『坊っちゃん』の時代(第3部) 【啄木日録】 かの蒼空に ―凛烈たり近代なお生彩あり明治人 アクションコミックス
『坊っちゃん』の時代(第3部) 【啄木日録】 かの蒼空に ―凛烈たり近代なお生彩あり明治人 アクションコミックス
- 作家
- 出版社
- 双葉社
- 発売日
- 1992-01-01
- ISBN
- 9784575932812
『坊っちゃん』の時代(第3部) 【啄木日録】 かの蒼空に ―凛烈たり近代なお生彩あり明治人 アクションコミックス / 感想・レビュー
みつき
石川啄木を軸とした三巻。もう前巻の鴎外が可愛く思えるほど、啄木の浪費癖っぷりにはウンザリしますが、森田草平との出会いや、平塚らいてうを始めとする先進的な女性達、あの人との古本屋での邂逅、この時代が好きな方ならたまらない構成となっています。まぁでもとにかく啄木に「貧乏なんはあんたが全部悪いんや!」と一喝したい。金田一さんに迷惑かけたらあかんやんか!!この~バカチンが!!!
2013/02/05
阿部義彦
第三巻読了。今回の主役は石川啄木。借金に借金をかさね、まとまった金が入ると、友人に奢ったり、大して必要でも無い高価な本などを衝動的に買ってしまう。そして、夜の女も。破滅型でも、酒や薬には溺れる訳では無いし、お金を借りるのにも礼儀正しいが、なんとも明るい貧乏神さながら。周りの友人同僚達にとっては偉い迷惑な存在なのでしょう。今回は同情は出来ず、後は野垂れ死にしか無いのではないかと突き放してしまう自分です。漱石や鴎外よりは後の世代で、原作者の後書きでは、リアルな今なら啄木は新人類と言われる世代を体現してるそう。
2023/10/25
eihuji
坊ちゃんの時代第三部は啄木石川一を中心に描く。啄木・ローマ字日記に発想を得た模様。愛すべき石川啄木像を僕に刷り込んだ作品であり、かれこれ25年振りの再読となる。借金踏み倒し・遊郭通い・家長の責任オール放棄等々、当節啄木のダメ人間ぶりは巷間広く知れ渡った感があるが、作中しばしば見せる寂しげな眼差しに報われない葛藤が窺われ、軽佻と深甚、放埓と苦悩の相克が程よい味を醸し出す。金田一京助のお人好し振りも相当なアレだが見放せない友情は理解出来る。
2018/01/18
長野秀一郎
明治人たちの「敗北」を描く本シリーズだが、本巻における敵は「(自身の)放埒」である。他の巻において明治の人々が敗れる相手は「時代の変化」「公の社会」「法秩序」そして「死」と、(比べれば)当人の外部にあるのに対してこれは異色だ。主人公・啄木がこれに抗いながらも結局負けてしまうさまは自業自得とも言え、他巻にある敗者の美学的なものは感じられない。だが啄木を打ち負かしたモノは現代においてむしろさらに手強い怪物と化し、私たちはみな彼の後継者として日々これと戦うことを強いられている。ともあれ本書の評価は4+としたい。
2017/09/29
しゅん
性衝動(故の風俗通い)と甲斐性なしに悩む石川啄木編。北原白秋の童貞捨てを率先させたのは啄木だった、朝日新聞でひたすら給料前借りしてた、などの話。菅野須賀子・幸徳秋水ら大逆事件前夜の様子と同時進行で描かれ、啄木・須賀子の会話が重要な役割を果たす。どんどん世界が変わっていき、生活は常に苦し。煮え切らないまま煮えたつ時代の空気が伝わる。その空気を象徴的に含んでいたのは啄木だった。生活と死を表現にしようと試みる平塚らいてうと、生活が表現だとは思えないまま短歌を呟く啄木の対比。谷口ジローの風景がより冴えている。
2023/04/15
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