死者との誓い (二見文庫 ブ 1-11 ザ・ミステリ・コレクション)
死者との誓い (二見文庫 ブ 1-11 ザ・ミステリ・コレクション) / 感想・レビュー
セウテス
【マット・スカダー シリーズ】第11弾。知人夫婦の夫が、撃たれて死亡する。逮捕された男は、目撃証人と見かけから犯人とされ、更には獄中で刺されて死亡する。しかし後に、被害者を人違いで撃ったと思われる容疑者が明らかになる。善悪とか正義とか、全く関係ない処での普通の死が、こんなにも難しいのか。被害者も犯人にされた男も理不尽な死であり、絶対なる狂気の悪との三部作から、ガラリと変わり悩まされる物語である。結末もアメリカ的なのか、本人と家族が真実を知っているなら、それで良いという考え方が哀愁をさそい何とも言えない。
2022/02/01
Tetchy
暗鬱な“倒錯三部作”を経た本書はそれまでのシリーズにはなかった軽妙さを感じられる。それはマットがエレインとの結婚を意識しているためか、どこか二人の掛け合いにそれまでにない薔薇色めいた華やかさがあるのだ。しかし本書にはどこか死の翳が付きまとう。それは確実にマットもエレインも齢を取っているからだ。そして決定的なのはサブストーリーとして描かれるかつての恋人ジャン・キーンが病魔に侵され、余命幾許も無くなっているという事実だ。あらゆる意味で本書はシリーズの折り返し地点となるだろう。時代が移ろい、人の心も移ろうのだ。
2015/08/08
ずっきん
マット・スカダー#11.ぐっとスカダーの苦悩と揺らぎに深く斬り込んだ静かな作品。そりゃそうだ、倒錯三部作であれだけの決断と大転換をみせた後はこうなるのが自然というもの。倒錯三部作のエピローグと次へのプロローグだろうか、岐路をふりかえるような彼の思いが全編を流れる。スカダーの内面はタフじゃない。読んでいてハラハラすることもしょっちゅうだ。でも自分の正義をけして振りかざさない、そんなところがいいんだなあー。シリーズで読んでいれば、耽溺ものの一冊。
2018/06/16
ネムル
偶然と死に悩まされ続けるこのシリーズも、理不尽への抗戦から鎮魂へと、新たなターニングを遂げた。痛切な虚しさに心乱されるが、友人の死を受けてマット・スカダーはどちらに向かっていくのだろう。
2023/08/23
キミ兄
久々にスカダーシリーズの純粋ミステリー。そしてスカダーを取り囲む女たち。そして次第に明らかになる死者の過去。食いついたら離さないスカダーの真骨頂。これが賞を取ったのも分かる。脇役たちの登場の仕方もほどよい存在感。しかしスカダーは自ら動いて状況に影響を与えるようになったな~。その反動が「殺し屋」なのかも。☆☆☆☆。
2019/02/07
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