処刑宣告 (二見文庫 ブ 1-16 ザ・ミステリ・コレクション)
処刑宣告 (二見文庫 ブ 1-16 ザ・ミステリ・コレクション) / 感想・レビュー
Tetchy
現代に甦った仕置人の正体を探る本格ミステリ的な設定にも関わらず神懸かった推理や驚愕のトリックがあるわけではない。マットが素直に人間を見つめてきたことで答えを得て犯人は導かれる。そのどれもが人間臭く、決して他人事とは思えないほど、心の在り様がリアルに思える。また2つの事件に共通するテーマは「病魔」。社会に蔓延する病気が犯罪を起こさせるこのテーマは刊行当時アメリカ社会を席巻していたHIVキャリア問題が色濃く反映されているからではないだろうか。そして『処刑宣告』という物々しいタイトルとは裏腹に結末は実に暖かい。
2015/12/22
タナー
‹デイリー・ニューズ›のコラムニストのもとに届いた手紙。その内容は、法では裁けぬ"悪人"を"ウィル=人々の意志"の名のもとに処刑するという、殺人予告だった。はたして、マフィアの首領をはじめ予告通りに殺人が繰り広げられていく。そんな中、次のターゲットとされ手紙を受け取った弁護士から、スカダーは身辺警護を依頼される。しかし、弁護士は命を落としてしまう.....。調査に乗り出したスカダーは、やがて意外な真実に出くわすこととなる。シリーズ第13作。再読。個人的には、ミック・バルーが出てこないのが少々残念であった。
2022/08/05
bapaksejahtera
「死者の長い列」の次作である。司法制度の弱点から法的制裁を受けないでいる悪徳漢を処断すると新聞コラムに書かせてこれを実行していく犯人。その模倣犯罪、及びこれと同時に末期患者の生命保険譲渡システムを利用した殺人が続いて発生。いずれもNY市民の関心事となる。これら犯行はことごとくスカダー探偵の手によって詳らかにされる。小説の着想は前作に続きユニークだが、出来具合は大分落ちると思う。自殺か他殺かの議論が長々続き、新婚スカダーの愛情会話も長々しい。やはり歳を取った探偵稼業の小説は、読者にとっても節々が痛くなる。
2020/11/14
ネムル
ダブルプロットの引っ張りがモタモタして、シリーズのなかではやや落ちる印象。ただし作中で「テロリズム」の語も使われているが、他にも生にまつわる金の問題やアテンションエコノミーのようなところが描かれると、911に代表されるような現代へといよいよカウントダウンが始まるように感じて、胆が冷えてくる。
2024/01/07
akiko
スカダー13作目。殺人予告の手紙が届く事件と公園でエイズ患者が殺される事件をスカダーが追求する。ヴァイアティカル取引とハヴメイヤーの告白は、色々考えさせられる。今作もエレインの気の利いた言葉やTJのダジャレ?がポンポン出てきて面白い!最後のパソコンや部屋の話はなんとなく日本人ぽい感じで、じわっときますね。
2019/09/22
感想・レビューをもっと見る