殺しのパレード (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
殺しのパレード (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション) / 感想・レビュー
Tetchy
2冊目の短編集だが大きな違いは本書が9・11を経て書かれていること。恐らくこれは『砕かれた街』同様、ブロックにとって9・11を消化するために書かなければならなかった作品なのだろう。“あの日”を境に変わってしまったNYの、いやアメリカで彼が想像した人物たちがどう折り合いをつけて物語の中で生き続けているのかを確かめるために。作者の選択は9・11を経てもケラーはケラーであることを気付かせることだった。作者が模索しながらケラーを書いている様子が行間から浮かび上がってくるが、どうにか本当のケラーを見つけたようだ。
2016/07/07
Kajitt22
ローレンス・ブロック三連荘。前2作は再読だが、今回は新規購入。孤独なニューヨーカー、殺し屋ケラーの連作短編集。ストイックささえ感じさせるケラーの内面描写が魅力的。殺し屋の平静の日常など想像もできないし、切手収集など面白いとは思わないが、このシュールな感じが何故か読ませる。ローレンス・ブロックもう少し読みたい。
2023/03/29
hope
殺し屋ケラーの孤独。殺すことは“仕事”である。と割り切ってる。はずなのに、満足感には程遠く、いつも憂鬱になるのは何故なのか。ぐらり。 そして彼は、ツインタワーの崩壊を見てから、何かが変わる。ぐらり。 俺は善悪の観念が欠けている人間だったんじゃないのか? 焦燥と葛藤。ある種の終活。出口はまだ見えない。
2022/03/21
シキモリ
シリーズ三作目の短編集。シリーズ全五作の折り返し地点となる今作は前二作に比べ、変化球的な作品が数多く並んでいる。9.11を経たケラーの心の揺れに始まり、今まで多くを語られなかった彼の内面が描かれていく。依頼人や標的との接触を禁じてきたケラーが偶発的だったり自発的にルールを逸脱することで展開のバリエーションは増えているが、変化の及ぼす影響により、前作で仄めかされた【引退】の二文字もより一層現実的となる。あとがきによれば、次作は本格的な長編とのこと。書店で中々見かけないので、入手し易い内に積んでおいて大正解。
2021/03/27
Panzer Leader
今作もドットとの会話・ケラーの悩み・趣味の描写に重きが置かれ、仕事の場面はあっさりと描かれる。心ならずも標的と知り合いになってしまったり、気付かず尾行されたりと脇の甘さは相変わらずのケラーさんクオリティ。剃刀のような緊張感のあるグレイマン・シリーズも好きだけれど、ゆるいこのシリーズも味わい深い。
2015/05/06
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