小説 品川心中
小説 品川心中 / 感想・レビュー
真理そら
品川の遊廓「白木屋」(土蔵相模がモデルかもしれないと解説にある、とすれば一流の遊廓だ)で長い間板頭(NO1の遊女)だったのになじみの客が高齢化してしまいトップから滑り落ちてしまい今は客の付かない年増になってしまったお染。でもカバー絵のように美しく矜持はある、その矜持のために借金をすることもできず死んでしまおうと思う。惨めではない死に方として心中することに決め、相手として貸本屋の金蔵を選ぶ。このお染と現板頭のこはる、男衆の喜助の心理がじっくりと描かれているのが良い、金蔵周辺の人物はいかにも落語的なキャラ、
2021/08/01
藤月はな(灯れ松明の火)
かつては板頭(No.1)だったが、今は落魄れてしまったお染。その理由は馴染の客が高齢化してしまった為と何とも身近でだからこそ、侘しいものだった。お金に困っているのに板頭だった頃のプライドが邪魔して真逆の手管で成功した妹分、こはるの親切も素直に受け入れず、陰口を自分に当て嵌めてしまう程、切羽詰まっている。そんな彼女は有終の美を飾る為、心中を試みるが、その相手はうだつが揚がらない男だった!おい、お染、それでいいのかと思っていたらオチの爽やかさに笑む。だが数え25歳で目尻の皺を気にするお染に私ゃ、愕然としたよ。
2021/08/11
ともくん
古典落語の名作を小説として、描き直した作品。 自業自得、因果応報。 かと思いきや、結末は女の強さが前面に。 落語とは、違うオチらしいが、こちらのオチも中々楽しませてもらった。
2022/05/10
reo
この落語に登場してくるお染さんだが、金蔵を海に突き落としたことは突き落としたのだが、追ってきた若い衆に止められなかったら自分も同じように身を投げていた。その辺が「首ったけ」の紅梅さんや「お見立て」、「三枚起請」の喜瀬川さんに比べ人情味があり、愛される女郎といえるかも。それとこの小説ではかなりの人が登場してくるが、本家落語の登場人物はお染、金蔵、甚五郎、若い衆、甚五郎の子分でほぼ全員です。それが圓生や談志、志ん朝にかかると、皆が生き生きと喋りだす。これこそ談志の言うところの言葉のイリュージョンですな。
2022/03/04
蒼
元は落語の物語だそうで、そうと知って読めば落語家さんの語りを聞いているような物語だった。10かそこらで品川宿の女郎屋に売られたお染は18の歳には板頭となり品川の人気を博す遊女になるも、25の歳には人間は凋落する。17〜20の女だけがもてはやされる「廓」にあって、朋輩や歳若い遊女達に稼げなくなった女郎と陰口を聞かされ、見返す為だけに心中を企てるが、、。今の時代でも若さだけが女性の価値のように捉えられるが、江戸時代の廓はそれが全てだったのだろう。
2022/04/30
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