聖なる酒場の挽歌 (二見文庫 ブ 1-1 ザ・ミステリ・コレクション)
聖なる酒場の挽歌 (二見文庫 ブ 1-1 ザ・ミステリ・コレクション) / 感想・レビュー
セウテス
スカダーシリーズ第6弾。前作「八百万の死にざま」の後、何年か前の事件の回想という形で語られている。つまりは、スカダーが酒を飲む最後の描写になるかも知れない物語なのだ。また今回も友人たちの為に依頼を受けるのだが、本作は事件よりも各々の理由で酒を飲む人たちの、人間的な根源的な思いを描いている様に感じる。本を読まなければ、本から得る感動などは解らない様に、酒を呑んでこそ溢れる感情が在る事が、たいへん良く伝わる。なんと優しく、温かいハードボイルドなのだろう。タイトルが本当にグッとくる、じっくりと味わいたい作品だ。
2017/09/30
Tetchy
これは古き良きむくつけき酒飲みたちの物語。酒飲みたちは酒を飲んでいる間、詩人になり、語り合う。だから彼らは酒場を去り難く思い、いつまでも盃を重ねるのだ。酔いどれたちが名残惜しむ酒場への愛着と哀惜、そして酒を酌み交わすことで生まれる友情を謳っているかのようだ。当時は恐らく作者がシリーズを終わらせるために書かれた、マット・スカダーへの餞の物語だったのだろう。それくらい本書の結末は喪失感に満ちている。しかしこの後からこのシリーズの真骨頂とも云うべき物語が紡がれるのだから、本当にブロックの才には畏れ入る。
2015/03/07
ずっきん
「八百万の死にざま」で酒を絶ったスカダーが、十年前に起こった事件を思い返す。ノスタルジックというかデカダンスな空気が漂う中、過ごした酒場、友人たちの姿がくっきりと浮かびあがり、えも言われぬ物語に仕上がっている。タイトルが幾度も頭の中の情景を漂う。はああ、たまらない。スカダーシリーズはまだ二作目だけど、この一見穏やかでゆるい、尚且つ意固地なおっさんにもう夢中だ。ローレンス・ブロックが描く男どもはわたしを虜にするね。酔いたい方に強力にお薦めする、聖なる酒場が閉まるまでのお話。
2018/05/16
Cinejazz
田口俊樹氏翻訳によるロ-レンス・ブロックの<アル中探偵・マット・スカダ->シリ-ズの第6弾は、本棚の隅に30年以上眠っていた初読み作品。 ニュ-ヨ-クの酒場酒場を練り歩く元警官のマットが、窃盗、恐喝、殺人が複層した10年前の犯罪事件を回想するノスタルジックなハードボイルド小説です。事件当時の関係者は世を去るか消息不明となり、渡り歩いた酒場は今はなく、マッドは酒との縁を切ってバーボンの入っていないコ-ヒ-を飲むようになり、すべてを変えた10年の月日を振り返るマット・スカダ-でありました。
2021/06/18
びぃごろ
【マットスカダーシリーズ⑥】断酒で命を繋いだマット。これからどういう日常を送るのか、キャラ変するのかー心構えが必要で前作から時間をとっていた。訳者あとがきによるとこの出版にも4年近い期間があり、10年前の回顧録という形で事件が語られている。またしても集大成感満載で、次作がどんな形なのかドキドキする。内容はラストまで犯人がわからず、必ず悪をあばくマットの手段はいかにと一気に読み込む。二つの酒場に入った強盗犯と強盗殺人で妻を亡くした男の事件。歩き回り現場の匂いを嗅ぎパズルのピースをためるマット、カッコいい!
2022/08/09
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