殺し屋 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション) (二見文庫 ロ 1-8 ザ・ミステリ・コレクション)
殺し屋 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション) (二見文庫 ロ 1-8 ザ・ミステリ・コレクション) / 感想・レビュー
Tetchy
殺し屋を主人公にしながらこのヴァラエティーの豊かさはどうしたものか。ブロックはアイデアの宝庫であり、ノンシリーズのみならず連作短編でさえもその瑞々しさは損なわれることがないことを証明した。男臭さの宿る装丁で手に取ることを敢えて躊躇っているならばそれは実に勿体ない話だ。ケラーの、どことなく思弁性を感じさせる彼独特の人生哲学と、仕事斡旋人のドットとの掛け合いの妙を存分に堪能してほしい。殺しを扱いながらこんなにも明るい物語に出遭えるのだから。この二律背反を見事に調和させたブロックの職人芸を堪能して頂きたい。
2016/01/24
🅼🆈½ ユニス™
ケラーの仕事は血が飛び散って暴力が横行する荒っぽい仕事というよりは出来るだけ自然死のように見える方法を見つけ出す、生真面目の会社員のように思えた。本質的に残忍にならざるを得ない殺人を気怠い日常の中で、繰り返される業務のように描いている所が興味深かかった。何事も忘れて自分から一番掛け離れた世界を楽しみたい人にはおすすめかも。
2021/02/19
Panzer Leader
「ケラーの療法(治療法)」の東江・田口訳を読み比べるため手にするも、読み始めたら面白くて結局最後まで再読。田口訳は原文に忠実にカッチリと訳していて、東江訳は遊び心溢れる訳で、内容は当然変わらないながらも訳し方のスタイルがそれぞれ違っているのがよく分かる。”ディック・ハーディン(勃起したペニス)”を竿野堅蔵とするのは東江らしいなと思わず微笑んでしまう。今回再読してみて改めてケラーの日常生活と殺しの場面のあまりの温度差にちょっと驚く。
2019/06/22
ntahima
ハードボイルの伝説的古典と言えば飾りを極力排したものと、華麗なるレトリックを駆使した両極端がある。両作甲乙は付け難いが本作は前者に属する。又、文章は形容詞から腐るという言葉もあるが、このジャンルで多用される商品名等、世相を表す固有名詞が腐らないのは何故だろう?真実が何処にあるのかは分らないが、本作が秀作であり、当面、陳腐化することがないことだけは断言できる。簡潔な短文が続くきびきびした文体。さすがミステリ界の匠の技。精密機械ゴルゴ13に比べるとミス・ショットが多いが、これも生身の人間らしくて好感が持てる。
2013/02/07
Panzer Leader
どこにでもいそうな現実的人物像と、ありえなさそうな非現実的職業像が巧みにブレンドされた作品。 こんなにターゲットと会話して、心まで通わしてしまう殺し屋なんて初めて。 仕事はプロらしくこなすのに素人に正体を見破られ自宅を発見されたり、あまつさえターゲットからも正体を気づかれたりとケラーさん、ちょっと脇が甘いです。 ドットとの会話を始め、日常生活の描写を読んでいるとほのぼのとしてしまうのは間違った感想?
2015/01/27
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