チリンのすず (フレーベルのえほん 27)
チリンのすず (フレーベルのえほん 27) / 感想・レビュー
やすらぎ
小さなチリン。羊のチリン。その円らな瞳にはこの世の寂しさや哀しみが映っている。大切なチリン、離ればなれにならないように、首元には金色の鈴が付けられている。夜になると雄叫びが聞こえるでしょう。狼がお腹を空かせているの。毛に包まれた羊は食べづらいから襲わないよ。満腹になるためなら何でもするの。本当なのかな。残酷な現実。守られた命。強くなりたい。誰よりも強く。ぼくがみんなを守るために。それなのにぼくは。狼の孤独を知るチリン。切り立つ崖の上、声のない叫びが聴こえてくる。激しい嵐に吹かれても、もう鈴の音は響かない。
2024/02/03
masa@レビューお休み中
愛情も、憎しみも、感情が激しく動くという意味においては、どちらも同じなのかもしれない。だから、ときどき勘違いをしてしまうことがある。愛しているのに憎々しいと思ったり、憎しみが強いばかりに愛していることに気づかなかったり…。こういうことって往々にして起こる。愛も、憎しみも、どちらも厄介な感情だ。支配しようとしたり、独占しようとしたり、騙そうとしたりするのだから、良い意味でも、悪い意味でも、その相手に対する関心が異様に高くなければできることではない。だからこそ、誰にも理解することもできないような気がするんだ。
2013/10/29
積読亭くま吉(●´(エ)`●)
★★★☆やるせなくて、切なくて、ただ悲しい。何ものも生み出さない、憎しみという感情に呑まれた仔羊の話し。たとえどんな理由であろうとも、きっかけが愛だろうと、執着は目の前にある物さえ暗闇の中に隠してしまう。読み友Natsukiさんのレビューより手に取りました。なっちゃん、ありがとう
2016/02/07
Natsuki
表紙の愛くるしい「こひつじチリン」の絵からは想像もできない、悲しくやりきれないお話でした。初版1978年ですが、今だからこそ必要な一冊なのかもしれません。恨みや怒りから生まれるのは悲しみだけ。恥ずかしながら、「アンパンマン」以外の作品を読むのは初めてかもしれませんが、やなせたかしさんの絵本は大切なことを教えてくれています。
2016/02/04
さらば火野正平・寺
本日、某所で開催中の『やなせたかし展』で著者の原画で読んだ。結構切ない話である。ネタバレになるのだが、親を狼に殺された可愛い子羊・チリンは狼に弟子入り。狼に育てられ風貌も変わる。ある日狼を襲ったのは………。憎しみの不毛を描いた悲劇である。子羊時代のチリンの絵が実に可愛い。可愛いままで終わらせないところがまた良い。憎しみよりも愛情が勝るからこその哀しみ。憎しみに人生(羊生か?)をかけたこその哀しみである。大人になって初めて読んだのだが、子供の頃に読んでいたら、はたして私はどう思っただろうか?。
2014/08/30
感想・レビューをもっと見る