〔白川静の絵本〕サイのものがたり
〔白川静の絵本〕サイのものがたり / 感想・レビュー
mocha
サイは「口」の原形。クチの象形文字ではなく「祈りの言葉を入れる器」と解釈すると、派生した漢字の辻褄が合うと説く。文章がとても高尚で難しいところもあるのだけれど、金子都美絵さんの絵が理解を助けてくれる。漢字のひとつひとつから、古代人の祈りの物語が立ち上って来るようだ。大人のための美しい絵本。
2019/10/22
へくとぱすかる
漢字のもつ「意味」を、古代人の思考にそって解きほぐしていく。白川先生独特の展開は、読みながら古代の光景を現前させるかのようだ。金子氏のイラストも、自然への畏敬・信仰・呪術にみちた古代社会をみごとに象徴してくれている。「口」の形をした漢字の一部分が、実は祈りの言葉を入れた箱の象形であるという説は、合理的思考を背景とした淡彩の古代像を覆し、一気に宗教的な色彩感にみちた世界へいざなう。現代の漢字の意味と、似てはいるものの、何とその色合いの違っていることか。古代中国を角度をかえて見るための扉である。
2020/03/11
榊原 香織
漢字の起源はすべて神に対する祈りに繋がっている。 白川静ワールドを絵本に。
2024/04/12
へくとぱすかる
4年ぶり再読。モノクロに近い影絵のようなイラストが、古代という時代を現出させている。同じ漢字とはいえ、ここでは古代文字として呪術的な空気に満ちていて、それを記述する白川先生の文章ですら、現代の日本語であるのに古代的なヒビキがしてくる。漢字の構成要素として、かつて口を表すとされてきた四角い図形が、実は「のりと」を収める箱であったということを出発点に、漢字の持つ原初の意味を次々に列挙していく。いかに現代人は漢字の古代的・呪術的要素を排して、忘れてきたかを突きつけてくる本である。イラストとの相乗効果は抜群だ。
2024/09/24
紅香@本購入まであと9冊
従来、顔のパーツの口と考えられてきた口(サイ)は実は神に祈り、誓う時の祝詞を入れる器の形。。文字はあまりにも当たり前に存在する。が、ひとたび観点を変えると宇宙に広がる星座みたいで面白い。『ことばには空間も時間もない。ことばを文字として形象化することによって空間を持ち、持続する。もっとも重要なことはことばの持つ呪的な機能をそこに定着し永久化すること』先人たちが文字を持ちたかった動機は神と交信すること。彼らの祈りがサイに閉じ込められ現代にまで届けられた祈り。蓋を開く。そんなことを考えると感慨深い気持ちになる。
2017/10/01
感想・レビューをもっと見る