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文字逍遥 (平凡社ライブラリー)

文字逍遥 (平凡社ライブラリー)

文字逍遥 (平凡社ライブラリー)

作家
白川静
出版社
平凡社
発売日
1994-04-11
ISBN
9784582760460
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文字逍遥 (平凡社ライブラリー) / 感想・レビュー

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Bartleby

『説文解字』が漢字の聖典のように長らくみなされてきたが、その後殷の甲骨文字が発掘されるなどして上著の誤りが見つかった。白川静は新たな資料を熟読し、新たな漢字学をみずから打ち立てようとした。彼の、祝詞をおさめる容器を表す“サイ”(Aを上下逆さまにして潰したような字)の字を軸にした漢字学は、漢字学においてどのような位置にあるのか寡聞にして知らないけれど、とにかく一つの壮大な物語として読めてすこぶる面白い。

2022/11/10

Hatann

漢字に隠れた精神史の諸相を捉えたエッセイ集。漢字の本来の意味について、一般の辞書的通義で済ませるのではなく、本来の文字構造や語構成、容疑について述べることが必要だとする。「遊」は、神が幽顕の世界に自在に往来することだという。「道」は、人間の挑戦によって識られざる霊的な外界に開かれることだという。甲骨文・金文をトレースしながら探究した意味に唸る。白川静は東洋とは何かという問いを追った。敗戦後の現実は東洋の崩壊を齎したが、潜在的には今でも通底しているはずだ。漢字は東洋文化圏の連帯の証人として今も生きている。

2022/05/04

もち

おもしろかった。硬質な文体で、むずかしくも思ったが、得られるところも大きかったように思う。常用漢字を制定したかたや、それを改変されているかたに是非とも読んでほしい。

2016/05/11

roughfractus02

藤堂明保との論争を記す本書は、60年代の漢字研究が音符と意符に分裂していたことを記す。意符重視の著者には、音符重視は人間中心主義的過ぎるが、逆に言えば、歴史と地域を経て変容しつつ存続するこの文字に、呪的機能のみを強調することはその柔軟性を脇に置くことになる。日本の漢字との出会いに関する第三章「漢字古訓抄」を読むと、意(図)が音より圧倒的に多いこの文字の研究には帰納推論が妥当だろうが、新たなデータが出るたびに定説が揺れ動きやすい脆弱さも抱えるかに見える。著者はその特徴の下で縦横に仮説推量を仕掛けるのだろう。

2020/12/25

Takumi

 日常にありふれた漢字の彼方にどんな世界が広がっているのだろうか。白川静は、文字の原初へ想いを馳せることで、古代の人の営為を紐解き、忘れ去られてしまった神の面影を見出す。  古代を生きた人の世界観に向けられた眼差しは、漢字が持つ世界を人だけに留まらせない。「遊」の文字から神を語る。絶対の自由をもつ神は、常に隠れていて、その隠れたる神は出遊し、彷徨するところ「遊」の原義がある。「遊」とは隠れて動かざる神が動くこと、遊行、逍遥を表す。  ありふれた日常の世界を相対化し、未見の世界の面影を白川静と散歩する一冊。

2020/11/14

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