ゲイ短編小説集 (平凡社ライブラリー)
ゲイ短編小説集 (平凡社ライブラリー) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
オスカー・ワイルドは同性愛者だったが、『幸福の王子』はゲイ小説に入るのが普通なのか・・・?私は王子の望みを叶える燕は「両義的でもあり、同時に性もない存在」だと思います。『チャタレー夫人の恋人』などの官能描写で有名なローレンスによる『プロシア士官』は匂い系小説の祖先かと思う位、ドキドキしました(笑)『永遠の生命』は帝国主義時代を痛烈に批判しつつも決して通じ合わない文化的齟齬も抉り出していて別の意味でも刺激的でした。『手』の貶められた経歴に対して清廉潔白な人格を秘かに告げる手の描写が美しかったです。
2014/12/04
syaori
「ストレート・フィクションとゲイ・フィクションは表裏一体化している。もしそうならストレート・フィクションをゲイ・フィクションとしてカミング・アウトさせることもできるだろう」本書はその小さな一歩とのことですが、モームの作品を「特有の女性嫌悪」が「同性愛者の感性と結び付く」とするように、単純にゲイ作家によるストレート作品のカミング・アウトに繋げてしまうのは少し安易に感じました。そういう意味で作品の選定に疑問が残りましたが、掲載作はどれも釈然としない思いをものともしない素晴らしさで、『密林の野獣』は特に好き。
2018/07/11
こばまり
お目当てはロレンス「プロシア士官」。収められた9作は一様に思わせぶりな緊張感を孕み手に汗握るが、アンソロジーのような意図された作品群としてではなく、ふいに出会って読む方が衝撃度が高く心に残るように思われる。
2017/07/23
kasim
ゲイとくくらなくても有名な作品が多く、半分くらいは既読。定評ある「プロシア士官」はもちろんのこと、「幸福な王子」や「密林の野獣」もそういう目で読めばそう読めてくる。初めて読んだワイルドの「W・H氏の肖像」とフォースターのコロニアルな「永遠の生命」がとても面白かった。前者はシェイクスピアのソネットをめぐる文学研究話であるとともに、真偽の区別を無効にするワイルドらしい作品。解説も読みごたえがあり、カミングアウトとパッシング、それぞれの意義と危険が指摘される。
2021/06/06
くさてる
ゲイ・キャノンってなんだろうと思ったら、キャノン=正典なのですね。その名にふさわしいような読み応えのある古典が詰まってます。といっても直接的に同性愛を扱ったものはほとんどありません。でも、ヘンリー・ジェイムズ「密林の野獣」は、まさにそれだと思うし、サマセット・モーム「まさかの時の友」も、そうだと思うのです……。面白いアンソロジーでした。
2020/12/24
感想・レビューをもっと見る